迷走神経系は、臓器内の生体情報を感知して脳へ送り(求心路)、全身の各臓器の機能を調節する(遠心路)、生体恒常性の柱であるが、計測技術の不備のため、神経の個々の線維や終末の動態は理解されていない。本研究は、胸腹部臓器を支配する迷走神経の臓器内構造や細胞動態について、将来の医療開発に繋がる基盤的理解を得ることを目指す。平成29年度は、研究①「MEMS神経マシンによる迷走神経の線維別電気活動解析」として、胸腹部臓器に分布する遠心性迷走神経および求心性迷走神経を対象として、神経活動を計測し解析した。麻酔下で人工呼吸管理下の動物(ラット)を対象に、頚部迷走神経や臓器近傍の迷走神経に同マシンを装着し、神経記録の部位や神経活動の特徴、測定された神経活動の由来臓器を特定すると共に、その神経発火特性を調べた。さらに、種々の生理的刺激を加えた時の応答から、その神経応答特性を解析した。また、研究②「遺伝学的2光子イメージングによる迷走神経の可視化解析」として、新規開発した全身の遠心性迷走神経活動が緑に光るラットを利用し、麻酔下の生きた動物において迷走神経活動を2光子顕微イメージングした。さらに、新規開発した全身の求心性神経活動が緑に光るラットを利用し、麻酔下の生きた動物において神経活動を2光子顕微イメージングした。また、この生動物2光子イメージングの後、固定標本において免疫組織化学解析を行い、臓器組織内における遠心性迷走神経および求心性神経の3次元配置や構造(神経終末の空間分布等)を調べた。
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