本年度は、多層構造を有するシート型デバイスを検討した。高分子薄膜材料としてPoly(ethylene glycol) dimethacrylate (PEGDM)、Tri(ethylene glycol) dimethacrylate (TEGDM)を用いた。PEGDMとTEGDMの比率を変えて光重合させることで、シート内の薬剤透過性を制御できる。PEGDMの比率が大きくなると透過性が高くなり、TEGDMの比率が大きくなると透過性が低くなる。はじめにモデル薬剤として蛍光色素 Fluoresceinを含んだ薬剤層を作製した。次に徐放に一方向性を持たせるため、薬剤層の下に薬剤透過率の極めて低いガード層を設けた。また、薬剤層の上に徐放制御のための放出制御層を設けることで三層構造シートとした。一層シートでは初期バーストが見られたが、三層シートでは初期バーストが抑制され、約三カ月にわたって徐放の継続が確認された。このことからガード層と放出制御層が、初期バーストを抑え、長期的な薬剤放出を可能としていることが分かった。続いて、細管からデバイスを体内に送達後に自己展開を可能とするため、ガード層の下側に四層目となる展開層の導入を検討した。実際に四層シートを作製し展開試験を行った結果、自己展開後に患部への接着に適切な曲率の維持が確認できた。さらに、ウサギ結膜下へインジェクターを用いてデバイスを射出したところ、自己展開し強膜上に留まることが確認された。
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