細胞が体液中に分泌する小胞である細胞外ベシクル(EV)は,分泌した細胞の情報を持っていることから,その「濃度」,「表面性状」,「内部分子」などが,がんの新規バイオマーカーになると期待されている。本研究ではその情報をがん診断に利用するために,EVを捕捉・破砕するマイクロチップの開発を試みた。EVの「濃度」の情報を得るために,EV(特にエクソソーム)に一般的に発現している抗原と特異的に結合する抗体をマイクロチップ固定することで,迅速かつ簡便なEVの検出に成功した。また,マイクロチップのデザインや,検出のためのプロトコルを改善することにより,検出感度の高感度化にも成功した。これらの成果は,学会,学術雑誌,新聞によって発表し,研究代表者が1件,研究に従事してくれた学生が4件の学会賞を受賞をした。「表面性状」の情報を得るために,がん細胞が分泌したEV特異的な抗原と結合する抗体をマイクロチップに固定し,EVを検出することでEV表面に発現する膜タンパク質の情報を得ることに成功した。本成果に関しての学会発表することがすでに決定している。「内部分子」の情報を得るために,EVを破砕する表面を作製し,ある特定の条件ではEVが破砕されているという結果を得ることができた。表面の作製には,精密グラフト重合法やUVグラフト重合法など複数の方法でアプローチし,今後は最適な破砕表面の作製条件を見つけ,上記の捕捉表面と組み合わせてゆく必要があると考えている。
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