本年度、ラットのしっぽを使った神経の伝導速度の測定を行った。昨年神経伝導速度を25m/Sと報告したが、刺激レベルを様々に変えて、実験したところ、跳躍伝導の一回目と二回目の波形が重なり、伝導波形を見誤っていたことが判り、正確には50m/sであったことが判った。跳躍伝導の発火は50mm離れたところで、生じており、100mm離れると2回発火することが判った。このことから、跳躍伝導の検出は神経上のどこでもできるということではなく、ランビエ絞輪25個分ほど飛んだところで、跳躍伝導の発火が発生しており、ランビエ絞輪毎に跳躍伝導が発生しているのでは無いことが判った。従って、神経上の跳躍伝導を直接、磁気検出するには50mm毎の発火ポイントで行う必要があることが判った。このことが跳躍伝導の検出を難しくしている。磁気検出には磁気インピーダンス効果を利用したセンサーを活用した。その検出特性を測定したところ、0.1uT~1uTまでほぼ線形な感度特性を有しており、跳躍伝導の磁気検出可能な感度(0.12nT)には不足していることが判った。しかし、現状、磁気センサーとしては最高感度であるため、計画に沿って、ロックインアンプを使って感度アップを図った。神経の跳躍伝導の反応が可能な周期信号を使い、このパターン信号のみを検出するようにフィルターリングを施した。これにより、地磁気の影響などの周囲磁界の影響を含めたノイズ成分を除去した検出が可能になるため、磁気センサーの感度アップになるはずである。実験の結果、跳躍伝導そのものを検出するには至らなかった。やはり、磁気センサーそのものの感度が神経の跳躍伝導を検出するには不足していると考えられる。 神経刺激については、0.4Tの磁束密度を発生可能な刺激用コイルを試作して、実験を行ったが、コイルの磁気応答特性が悪く、神経を発火させるには至らなかった。
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