磁界の影響を受けない手術用マニピュレータの開発を目指し、レーザー誘起バブルによる新たなアクチュエータの検討を行った。バブルを発生させるための光源として、新たに最大出力200Wの近赤外半導体レーザー(LD)を用い、そのレーザー光を吸収させる液体としてカーボンパウダーを懸濁させた水を作動流体として用いることを提案し、原理確認実験を行った。アクチュエータ部分は、半導体レーザー装置から導光させた石英光ファイバの先端部にシリンダー部としてキャピラリーを組付け、そこへ作動流体を注入した後、直径約2mmのステンレスロッドを挿入してピストンとしたものを基本構成とした。半導体レーザーは駆動電流を変調することにより矩形波パルスを出力させ、1パルスあたりのエネルギーを300mJに調整し、本構成によるアクチュエータの動作確認実験を実施した。その結果、単一パルスおよび繰り返し周波数10Hzの駆動条件において、レーザーのパルス駆動に同期して、ステンレスロッドの往復運動(上下運動)が可能であることを確認した。レーザー変位計を用いて応答特性を測定したところ、レーザーパルス照射直後に立ち上がり、往復時間が約15ms、最大ストロークは数mmとなり、良好な追従性を示すことが判明した。これらの結果より、レーザー誘起バブルを利用することで、電気配線が不要な新たなアクチュエータを構成できる可能性が得られたものと考える。課題としては、シリンダーからの作動流体の漏れによりストローク長にむらが生ずることが挙げられ、最終的にモータとして機能させるためには、この対策が不可欠と考えられた。
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