研究課題/領域番号 |
16K12916
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50286978)
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研究分担者 |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳がん / 抗体 / リポソーム |
研究実績の概要 |
本年度計画では、抗体搭載リポソームの調製法の最適化を進めた。はじめにリポソームへの抗体搭載を行うために、DSPC, DSPE-PEG2000を基本構成脂質としてリポソームを作製し、活性基(マレイミド基)を有するPEG脂質を挿入させた。さらにマレイル化PEGリポソームへの抗体修飾を簡便に修飾するために、組換えリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド)を調製(大腸菌内でGST融合ペプチドとしてアフィニティー精製し、大量かつ高純度のものを得ることができた。これをマレイル化PEGリポソームと反応させ、リンカーペプチド修飾PEGリポソームとした。また、リポソームへの修飾用抗体には、乳がん細胞特異的抗原:HER2を認識するハーセプチンと同機能を有する抗体を用い、ヒト型の組換え抗体の抗原結合部位をヒトIgG Fcに連結した一本鎖抗体(scFv-Fc)遺伝子を293細胞に産生させた安定発現細胞株の培養上済を利用してprotein Aカラムクロマトグラフィーにて精製し、大量かつ高純度のものを得た。リンカーペプチド修飾PEGリポソームへの表面修飾は、scFv-Fcを添加混合することで行った。実際にリポソームへの抗体搭載を検証するために、組換えHER2タンパク質を固相化したプレートを利用して、蛍光ラベル化抗体搭載リポソームの標的受容体への相互作用性を評価したところ、HER2への高い結合性が示された。さらにHER2を過剰発現している乳がん細胞への取り込み能をリポソームを蛍光ラベル化することで蛍光顕微鏡にて評価したところ、抗体修飾依存的かつ効率的な取り込みが観察された。以上のことから、リンカーペプチドを利用することで、簡便なリポソームの抗体修飾が可能となることが示された。得られた知見は、今後の抗体デリバリーシステムの構築を促進させるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、乳がん治療に有用な抗体デリバリーシステムの構築の鍵となるリポソームの抗体修飾法の確立を目指し、調製法の検討を進め、得られたリポソームの機能性をin vitro実験にて検証した。実際にリポソームへの抗体修飾を簡便に行うために、proteinA結合性ペプチドを用いたところ、乳がん細胞を標的化する抗体修飾リポソームの調製が簡便に行えることが示された。今後、リポソームと抗体との結合性の高い結合性ペプチドについても検討する余地はあると思われるが、今年度目標の乳がん細胞を標的化する抗体をリポソーム搭載する簡便な手法を確立することを達成することができた。以上より、本研究は順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度計画では、リポソームへの抗体搭載の効率化を進めるとともに、バブルリポソームの調製法の最適化を目標とする。 1.抗体搭載リポソームの作製と機能(受容体への相互作用性)評価‐前年度検討で用いたリポソームへの抗体修飾のためのリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド)よりも更にFcドメインと高い結合活性が期待されるリンカーペプチド(proteinG結合性ペプチド)を用いてのリポソームへの抗体修飾を行い、乳がん細胞との相互作用性を蛍光顕微鏡やFACSにて比較検討する。また、抗体搭載リポソームあるいは、抗がん活性を高めた抗体搭載リポソームの細胞障害性をMTTアッセイにて評価する。 2.抗体搭載バブルリポソームの作製‐乳がん治療に特化した抗体搭載バブルリポソームを作製するため、前年度に調製した抗体ならびに抗体搭載に最適な構成脂質を用いて、PEG-リポソームを作製する。リンカーペプチド修飾PEGリポソームに抗体を結合させ、そこに超音波造影ガス(パーフルオロプロパン:C3F8)を強力超音波(42 kHz)照射下で封入することで抗体搭載バブルリポソームとする。種々の抗体搭載バブルリポソームと乳がん細胞との相互作用性を蛍光顕微鏡やFACSにて評価する。 本検討では、リポソームへの抗体搭載に乳がん細胞を標的化するscFv‐Fcを用いるが、抗体修飾の応用性を広げるために、種々の細胞膜受容体を標的化するマウス・ラットモノクローナル抗体を用いて、簡便なリポソームへの抗体修飾が可能となるかについても検討を加える。以上の検討により、リンカーペプチドを用いた簡便な抗体修飾リポソーム、バブルリポソームの調製法の最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は、ほぼ予定通り進み、リンカーペプチドを利用することで、簡便なリポソームの抗体修飾が可能となることが示された。しかしながら、調製した抗体搭載リポソームの細胞相互作用性を蛍光顕微鏡やフローサイトメトリーにより、十分解析するまでに至らなかったため、その分の試薬が未使用額となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用計画として、調製した抗体搭載リポソームの細胞相互作用性を蛍光顕微鏡やFACSにて比較検討する。また、抗体搭載リポソームあるいは、抗がん活性を高めた抗体搭載リポソームの細胞障害性をMTTアッセイにて評価する。これらの研究進捗を図るために使用する予定である。
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