前年度までの検討で見出したFcドメインと高い結合活性を有するリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド及びproteinG結合性ペプチド)を用い、リンカーペプチド修飾PEGリポソームを調製し、標的抗体修飾法ならびにその有用性を評価した。リンカーペプチド修飾PEGリポソームに、抗CD146抗体または抗HER2抗体を添加混合する簡便な手法で抗体修飾リポソームを作製したところ、CD146高発現細胞 (血管内皮細胞)またはHER2高発現細胞 (乳がん細胞)に対し、効率的なリポソームの取り込みが観察された。またこれら抗体修飾リポソームに超音波造影用ガスを封入したナノバブルを調製したところ、抗体特異的な細胞との相互作用が観察された。以上のことから、本リンカーペプチドを利用した抗体修飾法は、様々な抗体に対し応用可能であることが示された。更に抗体修飾ナノバブルのin vivoでの有用性を評価するため、担がんモデルマウスを用いたがん組織への超音波造影効果を検討した。結果、抗体未修飾のナノバブルと比較し、抗CD146抗体修飾ナノバブルで持続的な造影効果を示した。次に超音波照射を併用した抗体デリバリーシステムの構築の可能性について検討した。蛍光ラベル化抗体を修飾したナノバブルに超音波を照射し、HER2高発現細胞に対する抗体の送達能を蛍光顕微鏡にて調べた。その結果、標的細胞において蛍光ラベル化抗体が観察され、超音波照射に伴う抗体デリバリーの可能性が示された。以上のことから、リンカーペプチドを用いた超音波応答性抗体修飾ナノバブルは、超音波診断および抗体医薬のデリバリーを融合(Theranostics)させる新規乳がん治療ツールとなりうるものと期待される。
|