研究課題/領域番号 |
16K12920
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中村 亮一 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (30366356)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動補償 / 内視鏡外科学 / ナビゲーション / レーザ手術 / 動態解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は現在の手術室内での現実的な工学的応用可能技術と,その応用により大きな効用が期待できる新しい治療法の双方向からの検討により,術野内の臓器動態計測・追従による新しいナビゲーション治療技術を創成することである.具体的には,術中に取得可能な術野動体情報を基にした治療誘導技術が臨床上必要な精度を達成しているか(ニーズに基づくシーズの評価),そしてこの技術による誘導により成果の得られる治療法の開発が可能であるか(シーズに基づくニーズの選定)の2つの観点から,内視鏡下手術における二つのナビゲーション技術(マクロ・ミクロナビゲーション技術)開発と治療法提案を実施する. 平成28年度においてはマクロナビゲーション技術としてこれまで開発した3D超音波ナビゲーション技術を基盤に,誘導対象の選択的可視化と術前に獲得した精緻な解剖学的情報の重畳により誘導能力を向上させたフュージョン型ナビゲーションの開発と,ミクロナビゲーション技術として内視鏡下手術等の鏡視下手術の術野映像をセンサ情報として利用した医用画像ナビゲーションでは不可能な時空間的分解能の高いナビゲーション技術の開発を目標とした.今年度実績として,①拍動・揺動する臓器の運動を補償しつつ外科縫合用糸針を正確に運針する運動補償型縫合ロボットシステムの基礎開発を行い,運動補償により糸針刺入出位置決め誤差2mm以下,運針時の力負荷の60%低減などが達成できた.また②腹腔内を等張液で満たした腹腔鏡下手術(等張液灌流式腹腔鏡下手術)において,水中で平面内揺動する物体に対し誤差1.15mm程度での正確なレーザ照射が可能な運動補償型レーザ手術ロボットの基礎開発を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の一つである超音波ナビゲーションシステムの改良開発とロボットとの連携について,ナビゲーションソフトウェアの新規開発が難航し進捗が得られなかった.
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今後の研究の推進方策 |
運動補償型ロボットシステムの開発を進め,内視鏡情報によるミクロナビゲーションにより精緻で安全な縫合,レーザ焼灼(腫瘍焼灼・止血)を半自動的に実行可能にする手術支援技術を開発する.特に縫合ロボットでは確実な運針・閉創を達成するために必要な開創部固定補助機構を追加した新たなロボット機構の開発,レーザ手術ロボットではトロカールを介した腹腔内アクセスにおいて正確な位置決めを可能とするレーザプローブコントローラの開発を進める. また,術中超音波画像を利用したマクロナビゲーション技術との連携においては,2D/3Dいずれかのリアルタイム超音波画像の連続的な利用によるマクロな術野認識補助と誘導機能といった基礎的な機能から完全3Dによるナビゲーション機能まで,実装可能性と医工学的有用性を踏まえた技術開発研究を進める.その上で実際の誘導性能(静的な位置決め精度と分解能・時間遅れ等を加味した誘導能力)の医学的有用性について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の実施に使用する他の時限付き予算(運営費交付金)とあわせた効率的な予算執行にあたり,開発の一部費用を平成28年度のみ使用可能な予算での執行を優先したため. (本研究課題の交付額は公募時申請額よりも減額されており,不足分を運営費交付金等の他の研究費にて補填し研究を推進している)
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次年度使用額の使用計画 |
自動縫合・レーザ焼灼ロボットのハードウェア開発において物品費として使用する.
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