研究課題/領域番号 |
16K12926
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中澤 公孝 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90360677)
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研究分担者 |
関口 浩文 上武大学, 商学部, 准教授 (20392201)
小幡 博基 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (70455377)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | やる気 / リハビリテーション / 可塑性 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目的は、患者のやる気を高めリハビリの効果を最大化する新たな方法を開発することにある。そのために、本研究ではやる気に関連する脳領域への微弱な直流電気刺激(tDCS)が脊髄神経回路の可塑性を高めるか否かを明らかにすることを目的とした。神経科学領域で既に確立された脊髄反射のオペラント条件付け学習を試験課題とし、その成績がtDCSを与えた群において促進するのかを検証する。この効果が実証されれば、ヒトにおいてやる気や意欲に関連する脳領域の活性化が脊髄神経回路の可塑性をも促進することが神経科学的に示されることになる。それは、脊髄損傷など中枢神経損傷後のリハビリにおいてやる気を効率的に高め、中枢神経再組織化を促進する新たなニューロリハビリテーションの創出につながると期待される。本年度は被験者6名に対し、脊髄反射(H反射)のオペラント条件付け学習実験を実施した。被験者の半数はtDCSを用いてやる気を高める脳領域を刺激し、もう半数については偽刺激を与えた。未だ被験者数が少ないため、統計検定はしていないが、効果を検出する脊髄反射の安定性が十分確保できなかった。そのため、脊髄反射の学習自体が十分には確認できない被験者もいた。脊髄反射を安定して導出する方法は感覚神経の電気刺激方法を検討するなどして改善する必要がある。次年度はこの点を改善するとともに、オペラント条件付けの方法も見直して修正するなどして学習実験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は脊髄反射学習課題のトレーニング効果をtDCS群とSham群とで比較し、tDCS群においてトレーニング効果が促進するのか否かを明らかにすることを目標とした。その結果、明確な効果を検出することはできなかった。しかし、方法上の課題が明確になるとともに、次年度の脳活動計測の予備実験を実施するなど準備はほぼ整った。以上を総合的に評価し、やや遅れているとの自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はやる気に関連する脳領域へのtDCSが脊髄反射学習トレーニング時にいずれかの脳部位活動を変調するのかを明らかにすることを目標とする。健常な被検者を対象とする。1年目同様、被検者をtDCS群とSham群に分ける。1年目とは異なり、全ての脊髄反射トレーニングは臥位にて行う。これはMRI装置内でのトレーニングを可能とするためである。1年目と同様に12週間のトレーニングを行う。この期間中、ベースラインセッション初期(B1)、トレーニングセッション初期(C1)中期(C15)、終期(C30)、フォローアップ期(F1)の計4回H反射トレーニング中のfMRI撮像を行う。tDCSの有無、反射トレーニングの方向(反射振幅増大、減少)と脳活動部位の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は脊髄反射学習課題のトレーニング効果をtDCS群とSham群とで比較し、tDCS群においてトレーニング効果が促進するのか否かを明らかにすることを目標とした実験を実施した。そして翌年度の脳活動計測実験のための実験環境を整え予備実験を完了することを目標とした。しかし、被検者を当初の予定数集めることができず、その分の経費が執行されず残った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、健常な被検者20名を対象とし、1年目同様、被検者をtDCS群とSham群それぞれ10名ずつに分ける。この期間中、ベースラインセッション初期(B1)、トレーニングセッション初期(C1)中期(C15)、終期(C30)、フォローアップ期(F1)の計4回H反射トレーニング中のfMRI撮像を行う。tDCSの有無、反射トレーニングの方向(反射振幅増大、減少)と脳活動部位の関係を明らかにする実験を実施する。一年目に残余した分は被験者謝金として当該年度に執行する。
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