研究課題/領域番号 |
16K12928
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関根 克尚 金沢大学, 保健学系, 准教授 (10163106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 生体インピーダンス計測 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
平成30年度は、以下の理論検討と予備計測を実施した。 シミュレーションによる理論検討: 1)犬臀部から切除された筋組織の誘電率・伝導率の異方性(Epstain 1983)、マウス腓腹筋に対する成長の影響(Kapur 2018)、ラット腓腹筋に対する坐骨神経圧坐の影響(Wang 2011)について、合理的な筋組織構造によって計測結果を説明できた。しかし牛肉(腹直筋)のインピーダンスの異方性(Damez 2008)については、シミュレーション結果と計測結果とが大幅に異なり、羽状角や筋周膜の影響についても検討する必要があることが示唆された。2)試料中で計測対象となる領域の大きさを調べるため、モデルの大きさの影響を調べた。その結果、電極を筋線維と直交方向に配置したとき、筋線維と平行方向で計測対象となる領域が大きいことが明らかになった。3)体表に設置したガード電極が局所的計測に有効であるかどうかを検討した結果、ガード電極を設置しても計測される試料の範囲はあまり小さくならないことが明らかなった。 複数の計測装置を用いた予備計測: 1)局所的計測が実行できるかどうかを検討するため、生体計測用計測装置(SKメディカル MLT-500N)を用い、その標準的使用法よりも狭い電極間隔(2cm)でヒト腓腹筋、大殿筋の計測を行い、あわせて自作の局所計測用プローブ(電極間隔2mm)を用いて食肉(トリモモ肉、ササミ肉)を計測した。その結果、インピーダンスが当該装置の計測範囲を超えて計測不能となる場合があること、骨格筋の構造解析のためには当該装置の計測周波数範囲よりも低周波数域まで計測する必要があることが明らかになった。2)電気素子用計測装置(Keysight 4294A)を用いると、測定原理は異なるが、1)よりも広い周波数で計測でき、1)とほぼ同一の計測結果が得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究が目指す局所的な骨格筋構造解析のためには、当初計画の生体インピーダンス用計測装置では、計測できる周波数範囲やインピーダンスの範囲が不十分であることが判明した。このため、十分な性能を持つが生体計測用ではない別の計測装置が利用できるかどうか検討する必要が生じた。また、これまでのモデルでは説明できない計測結果があることが判明し、計測結果解析法を改良する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究によって、電気素子用計測装置が利用できることが示された。同様の計測装置(Keysight 4192A,現有)を用いる計測と、計測を模したシミュレーション結果とを比較しつつ、計測プローブの開発と計測結果解析法の開発を進展させる。具体的には、Rush(1962)によって考案されKwon(2017)によって拡張された方法を基礎にして、筋線維の走行方向、筋線維と平行方向・直交方向の誘電率と伝導率を決定し、筋組織の構造と関連付ける。プラスチック丸棒、肉薄ガラス管を用いて作成した骨格筋の模型、実験動物の骨格筋を用いて、計測結果解析法の妥当性を検証する。最終的にヒトに適用し、筋収縮、筋委縮の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備計測の結果、当初計画の生体インピーダンス用計測装置では計測できる周波数範囲やインピーダンスの範囲が、本研究課題を遂行するためには不十分であることが判明した。このため、計測プローブ作成、実際の試料計測まで進めることができなかった。 2019年度は、主として現有の電気素子用計測装置(Keysight 4192A)を用いるが、未使用となった研究費は、計測プローブ作成、計測試料(骨格筋模型材料、実験動物)、被験者謝金、成果発表費用として使用する。
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