研究課題/領域番号 |
16K12931
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 英志 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (50303615)
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研究分担者 |
松井 康素 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, ロコモフレイル診療部, 部長 (50501623)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がんリハビリテーション / 悪液質 / サルコペニア / 運動リハビリプログラム |
研究実績の概要 |
研究協力病院(A病院)において、がん治療を施行した45名をエントリーした。内訳は男性27例、女性18例、骨折時年齢は平均69.0歳(24-92歳)であり、原発巣は肺癌10例、悪性リンパ腫10例、骨軟部肉腫8例、白血病6例、大腸癌5例、その他6例であった。手術治療患者18例、化学療法及び放射線治療中患者27例であった。年齢、身長、体重、PS、HDS-R、握力、膝伸展筋力、下腿周囲長、10m歩行速度、TUG、Barthel Index、総蛋白、アルブミン、CRP、白血球数、ヘモグロビン、リンパ球数等の血液検査データを抽出した。悪液質の状態を確認する上でGPSスコアと各項目の関連を評価すると、GPSスコアの上昇につれて、膝進展筋力や下腿周囲経は低下する傾向にあり、Barthel Indexも同様にGPSスコアの上昇につれて低下傾向を示した。特に、移乗動作や排便、排尿動作など基本的な日常動作において影響が大きいと思われた。また、うつ症状を有していた患者では安静時VASスコアが高く歩行速度も低下する傾向が見られていた。まだ、エントリー症例数が少なく、統計学的な有意差は得られていないが、今後症例数を増やしていき、がんリハビリ患者の横断的な解析をさらに進めていく予定である。 また、健常ボランティアを対象とした運動プログラムの開発については、10名ほどエントリーを行っており、筋電図、三次元機能解析器を使用して歩行(通常歩行、ピッチ歩行、ストライド歩行)、ロコモ度テストの2ステップ動作と立ち上がり動作、開眼片脚立ち、スクワット動作、閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位動作等を解析中である。今後解析が終了次第、がんのステージ別の運動リハビリプログラムを作成していくことを計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数の集積がまだ不十分ではあるが、悪液質と身体機能やADL評価との関係を示すことができた。また、運動プログラムの作成についても10例の健常者をエントリーできている。筋電図や動作分析を解析中であり、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた結果を基にして以下の研究を行う。1)周術期リハビリにおける運動プログラム介入試験;胃がん、食道がん、大腸がん等の消化器がん手術患者を対象としたがんリハビリテーション介入群における身体機能の評価を調査する。除外基準として医学的な理由として担当医師が手術前の運動療法が不適切と判断した場合とする。また、対象は28年度で調査した病院とは異なるB病院に対し運動療法プログラムに従って手術前及び退院時にウォーキングの指導や自宅での運動を行なうように指導する。手術前から開始し、手術後は全身状態の安定した1週間後より再開する。退院後自宅でも患者本人により嫌気性代謝閾値強度での運動療法を術後6ヶ月以上指導する。評価項目は手術前、術後6ヶ月における術後合併症率を含め、横断的調査で施行した各項目(筋力、筋量、バランス能力テスト、抑うつテスト、栄養状態など)について調査を行なう。 2)健常ボランティアを対象とした運動プログラムの開発については、H28年度で10名ほどエントリーを行っており、さらに10名ほどエントリーを行いデータを集積する。筋電図、三次元機能解析器を使用した歩行動作、ロコモ度テストの2ステップ動作と立ち上がり動作、開眼片脚立ち、スクワット動作、閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位動作等を解析し、がんのステージ別の運動リハビリプログラムを作成していくことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度において、まだ十分な結果が得られておらず、学会発表に伴う旅費や学会参加費が当初予定よりも少なくなったため、26,887円の残額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度においては十分な調査結果をもとに学会発表や研究成果の投稿を積極的に行うために残額を使用する計画である。
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