研究課題
骨折の治療は、骨の自然治癒を待つことで行われる。しかし高齢者の骨粗鬆症に起因する骨折と難治性骨折には、待つだけではない治療が求められる。。骨折の治癒を促す手段として低出力超音波パルス(Low Intensity Pulsed Ultrasound:LIPUS)が実用化されているが、細胞を増殖する働きをもたないために、骨粗鬆症には効果がない。本研究では、超音波と電気刺激を用いて、骨形成を促進する物理的刺激を加えることで、新鮮骨折の治癒期間の短縮に高い効果をもち、骨粗鬆症の治癒効果もある新たな治療法・治療機器を開発することを目的とする。これにより、骨折の予防も含めた包括的な治療の新機軸を打ち出せることが期待できる。本年度は、先ず骨粗鬆症に対して最も治療効果のある超音波療法の至適な強度を検討した。形態学的ならびに力学的にもLIPUSよりも高強度の1.5W/cm2の超音波が骨粗鬆症を改善させた。次に新鮮骨折と骨粗鬆症に加えて、脆弱性骨折に対する電気刺激療法の効果を検討した。ラットの卵巣を摘除し骨粗鬆症を作製したうえで、大腿骨に骨欠損を作製し、脆弱性骨折のモデルとした。その結果、16mAの電気刺激による筋収縮を介した物理的刺激が脆弱性骨折を改善し得うる可能性が認められた。さらに超音波と電気刺激に加えて、骨に直接的に物理的刺激を加える手段として体外衝撃波を用いて、新鮮骨折・骨粗鬆症・脆弱性骨折に対する最も治療効果のある至適な強度を検討した。その結果、新鮮骨折では効果が認められなかったが、骨粗鬆症と脆弱性骨折で、強度依存的に骨構造が改善した。ただし脆弱性骨折では、高強度の体外衝撃波において、骨欠損部に有害事象と考えられる軟骨組織が形成される割合が増加した。
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