研究課題/領域番号 |
16K12935
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松川 寛二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (90165788)
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研究分担者 |
遠藤 加菜 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 助教 (60584696)
梁 楠 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 助教 (70512515)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大脳皮質脳活動 / 無拘束歩行運動 / セントラルコマンド / 携帯型近赤外分光計 / リハビリテーション / 大脳皮質運動野 / 大脳皮質前頭前野 |
研究実績の概要 |
平成28年度当初の研究実施計画は次の2点である。(1)無拘束歩行運動時にみられる大脳皮質脳活動を記録できる新しい無線計測系の開発、そして(2)このシステムを大脳皮質運動野に応用して、無拘束床歩行・トレッドミル歩行・エルゴメ-タ運動時にみられる運動野の脳活動記録であった。各項目に関する研究実績の概要を説明する。
(1) 大脳皮質脳活動を記録できる新しい無線計測系の開発: 無拘束運動時の脳活動(局所酸素化ヘモグロビン濃度、Oxy-Hb)を記録する方法として、近赤外分光計(NIRS)を用いた新しい無線遠隔計測システムを開発した。このシステムは約20mという距離まで心電図・筋電図・フットスイッチ等の信号も含めて無線送信できた。また、指尖血圧計ロガ-を用いて、動脈血圧を同時計測した。実験終了後に、3次元デジタイザ-を用いたNIRSプロ-ブの座標解析そして経頭蓋磁気刺激を用いた機能的同定により、大脳皮質運動野とNIRSプロ-ブ配置との関係を明らかにした。
(2)床歩行・トレッドミル歩行・エルゴメータ運動時にみられる運動野脳活動の記録:上記のように、大脳皮質運動野領域を3次元デジタイザ-および経頭蓋磁気刺激により同定した上で、無拘束床歩行・トレッドミル歩行・エルゴメ-タ運動時にみられる運動野の脳活動を比較した。床歩行やエルゴメ-タ運動において、運動野Oxy-Hbは、運動開始前に起こらず、運動開始後に軽度増加しその後に減少した。トレッドミル運動では、Oxy-Hb増加は観察されず減少のみ生じた。歩行速度を増加させた場合には、歩行運動中にみられたOxy-Hbの減少は速度依存的に亢進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度当初の研究実施計画は、(1)無拘束歩行運動時にみられる大脳皮質脳活動を記録できる新しい無線計測系の開発、そして(2)このシステムを大脳皮質運動野活動に応用して、無拘束床歩行・トレッドミル歩行・エルゴメータ運動時にみられる運動野脳活動を記録し比較することであった。これらの当初計画を達成できた上で、歩行速度に対する運動野脳活動の反応様式を解析することができた。トレッドミル歩行や高速度での床歩行の場合には運動野の脳活動は大きく低下することを発見した。この新しい所見は、随意性が低下するような歩行運動の制御には、皮質運動野よりも、皮質下運動核や小脳の役割が大きいことを示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 実験室内運動と無拘束歩行運動の比較:実験室内でのエルゴメ-タ運動(上肢回転・脚回転)やfMRI・PET・SPECT部屋内での拘束された条件下で実施された運動に比較して、無拘束歩行運動時の脳活動の違いを鮮明化したい。 (2) 多チャンネル脳活動計測と機能的役割:携帯型NIRS装置を用いて前頭葉の前頭前野や頭頂葉にある補足運動野・運動前野・一次運動野等の脳活動を同時記録する。無拘束運動時にみられる各部位の脳活動を時間経過や応答を比較して機能的役割を探索したい。 (3) 視覚性入力情報の影響:閉眼時には視覚性情報は遮断され歩行制御はより困難となる。皮質運動野による調節は歩行速度と共に減少するが、逆に閉眼時には皮質運動野による制御は増加すると期待される。この仮説の検証を行いたい。 (4) 平成28年度で得た新しい所見を論文にまとめ英文国際誌へ発表を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度研究計画を予想以上に進捗させることができ、実験繰り返し回数が当初の予定より減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の使用残額 (330,571円) を、平成29年度の物品費・旅費・謝金に組み入れて使用したい。
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