研究課題/領域番号 |
16K12936
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
細田 里南 高知大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (10626138)
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研究分担者 |
石田 健司 高知大学, その他部局等, その他(教授相当) (10274367)
永野 靖典 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (30380372)
榎 勇人 徳島文理大学, 保健福祉学部, 准教授 (40598538)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 匍匐動作 / 視覚 / 脳性麻痺 |
研究実績の概要 |
外界の視覚的変化によって身体行動が出現するシステムを「optical-flow」といい、これは移動経験の期間・有無にかかわらず、乳児を対象とした研究で「optical-flow」により匍匐運動が出現することが報告されている.情報収集として参加した関連学会及び研修会においても、動物実験による同様な報告が散見された.今回、脳性麻痺児に先行した視覚的介入により空間の移動を経験させ、その経験から身体運動を誘発させて匍匐動作の出現を促す手技を構築し、その意義を検証する機会を得た. H28年度の研究計画は研究に関する情報収集と、本研究の根幹である視覚情報「optical-flow」を提供する機器の作成であった.「自分が動けば周囲も動く=周囲が動いているということは自分も動いている」と感じるシステム「optical-flow」を様々な視覚刺激を用いて作成し、最終的には未獲得である匍匐運動を出現させるという新しい手法を試みる. まず、視覚刺激の種類としては『より単純でシンプルな映像の流れ』とし、機器作成を依頼するエンジニアの選定を行なった.環境作成には、臨床に耐えられる機器にするために専門業者に依頼しなければならず、必要以上に環境に配慮する必要がある。この部分は 本研究の中核部分で必要なものであり、これらがなければ研究を進めることは困難である.そのような事情の中選定したエンジニアとの数回の打ち合わせを行い、機器の規格や刺激入力の種類、刺激速度の調整の有無、外観を決定した.作成は開始しているが、最終的な調整は現在も継続中である.H29年6月頃に試作機が完成し、その後も刺激入力のスピードや種類のバリエーションの検討及び調整を行いつつ完成につながる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連学会及び研修会への参加を経て情報収集を行ない、本研究の根幹である視覚情報の種類を検討した.動物実験による報告や乳児の認知機能による知見を得て、「自分が動けば周囲も動く=周囲が動いているということは自分も動いている」と感じるシステム「optical-flow」として、『より単純でシンプルな映像の流れ』とし、機器作成を依頼するエンジニアの選定を行なった.まず、その機器の作成を依頼する業者の選定に難渋した.選定後は機器の設計に関わる打ち合わせを数回実施し、現状として大まかなシステム設計は図面として出来上がり、年度末より機器(試作機)作成の発注を行ない、引く続き詳細な打ち合わせを行いつつ、6月頃に完成予定である.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は機器に設定する視覚刺激が有用に作動するかを検討しつつ、機器の調整を行っていく必要がある.これまで我々は重度脳性麻痺児への視覚的変化を利用した葡旬運動アプローチとして、「optical-flow」を用いた介入への症例報告を行っている.これらの経験に基づき、その刺激方法を再検討したうえで、まずは匍匐動作を獲得する前の健康な乳児で調査を行い、それにより的確な手法を提案し、脳性麻痺児の匍匐動作誘発へのリハビリテーション手技として展開したい。本研究が成功すれば、匍匐運動の獲得の遅延が予測される児への予防的な介入としても展開できる。 H29.6月頃に試作機の完成が予定されており、その後、操作方法など実験前に設定の確認を準備しておく. H29年10月頃より四つ這い移動が未獲得である健康な乳児(10 例)に対して、視覚刺激によって引き起こされる匍匐動作の出現量を比較する。まず、通常の環境で乳児の匍匐運動が起こらないことを確認し、①「optical-flow」が出現しない環境で児を台車にのせて移動する、②モニター内の映像が「optical-flow」が誘発するように動く環境で乳児は静止している状況での匍匐動作を調査する。 調査方法としては、(1) 乳児の上方よりビデオ撮影する、(2) 乳児の片手とその対側の片足に加速度計を取り付け、活動を記録する.その活動量を匍匐動作出現と規定し、それぞれの有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
環境作成に関わる費用では、臨床に耐えられる機器にするために専門業者に依頼しなければならず、かなりの予算が発生する.特に対象が乳児であるため、衛生面を含め、乳児が怖がらないような雰囲気を作成するために必要以上に環境に配慮する必要がある.この部分は本研究の中核部分で必要なものであり、これらがなければ研究を進めることは困難である. よって、作成できるエンジニア(業者)の選定に時間を要し、現在まだ作成に取り掛かったばかりで納品に至っていないため、機器の費用についてはH28年度に予定していたが、H29年度への繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
現在、試作機は作成中であり、6月頃にいったん完成予定である.その後も試作機を作動させながら機器の調整を繰り返し、10月頃より健常乳児でのデータ収集を開始する予定である.
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