前年度に引き続き、実験に適切な培養細胞による筋萎縮モデルの確立のために、筋培養細胞に活動負荷を与えた状態で培養した後、脱負荷状態に切り替えて培養し萎縮の形態学的検証を行った。具体的には、モデルとして適切な活動負荷時間・強度・頻度、脱負荷時間と萎縮や肥大の変化を組織学的、生化学的に検証した。そして、本モデルが理学療法効果判定のモデルとして適当かどうかを検証した。蛋白質合成機構については、PI3K/ Akt/ mTOR 経路、mTOR/ p70S6K 経路、MAPK/MEK/ERK経路などに関わる分子の活性をウエスタンブロット法により検証した。ユビキチン-プロテアソーム系の蛋白質分解機構は、ユビキチンリガーゼE1阻害剤(UBEI-41:BIOGENOVA)を培地に添加して、本モデルにおける筋管細胞の横径の減少抑制の有無を検証した。またプロテアソーム阻害剤を培地に添加して、プロテアソームで認識されるK48 ポリユビキチン鎖によって修飾されたタンパク質の増加を検証した。オートファジー系の蛋白質分解機構は、オートファジーに重要な分子であるLC3 の活性をウエスタンブロット法により確認した。オートファジーの活性は、LC3II/LC3I の値で評価した。その結果、これまでに明らかになってきた刺激強度のコントロール、刺激時間と休息時間のサイクルに関してその詳細がほぼ明らかになった。これに加えて本モデルが、高負荷トレーニングにおける過負荷時の回復のメカニズムを明らかにするためのモデルとして有効となる可能性も示唆された。
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