研究課題
高齢期骨格筋の特徴として、骨格筋量の低下と筋肉内脂肪量が増加することが知られている。本研究では、高齢期骨格筋で認められる筋損傷後の再生能の低下や脂肪蓄積に対する漢方薬の予防効果について、骨格筋幹細胞である筋衛星(サテライト)細胞の後天的な遺伝子発現制御(エピジェネティクス)に着目して検討する。すなわち、長期的な漢方薬服用が、筋サテライト細胞に塩基配列の変化を伴わない遺伝情報として記憶(メモリー)されていることにより、筋再生能の改善に寄与するという仮説について分子、細胞、組織レベルで検討し、漢方薬がサルコペニアの予防・改善のための筋肉増強(再生)因子となりうるかについて科学的エビデンスを提示することが本研究の主たる目的である。初年度は若年期ラットを用いて下り走(ダウンヒル)による伸張性筋収縮の筋損傷モデルの確立を試みた。この筋損傷モデルを用いることによって、筋サテライト細胞の諸機能(活性化、増殖、分化)に対する漢方の影響をin vivoレベルで検討することが可能となる。初年度では、下り走後さまざまなタイミングで骨格筋を摘出し、連続凍結切片を作成して筋サテライト細胞(Pax7やM-cadherin)や諸機能(活性化、増殖、分化)を特異的に認識する抗体を用いて免疫組織化学染色にて検討した。下り走による筋損傷モデルが漢方薬の予防効果を検討するために適切な実験モデルかについて検討している。さらに、ギプス固定による不活動性筋萎縮において、黄耆煎薬を服用させることで筋萎縮が抑制されたことを見出しており、そのメカニズムについて細胞レベルでの解析を行っている。
3: やや遅れている
既に長期的に服用させる漢方薬は決定しているものの、下り走後における筋サテライト細胞の諸機能(活性化、増殖、分化)を評価するタイミングについて、免疫組織化学染色の評価が遅れている。
今回の筋損傷モデルにおいて、筋サテライト細胞の諸機能(活性化、増殖、分化)を評価できるタイミングが決定できれば円滑に本実験を実施することができる。そのため、免疫組織染色の分析・解析を迅速に実施するために、謝金を有効に活用して大学院生の協力を得て研究を遂行する予定である。
下り走による伸張性筋収縮の筋損傷モデルでの筋サテライト細胞の諸機能(活性化、増殖、分化)を評価するタイミングの決定が遅れているため、高齢期ラットを用いた実験が計画通りに実施できなかった。
2年目は、高齢期ラットを用いた実験を遂行する。また、培養技術や分子生物学のトレーニングを受けた研究支援者を1名雇用する。謝金を有効に活用して大学院生の協力を得て免疫組織染色の分析・解析を迅速に実施する。
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