骨格筋は可塑性に富んだ器官であり、運動(筋活動)量の増減に適応して構造的・機能的に変化する。損傷骨格筋の再生は筋活動量の影響を受けることが報告されているが、そのメカニズムには不明な点が多い。損傷骨格筋の再生には、骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞が重要であると考えられている。一方、乳酸は筋衛星細胞の調節因子を増加させることが報告されている。しかしながら、乳酸が損傷骨格筋の再生に及ぼす影響は未解明である。 本研究では、乳酸が損傷骨格筋の再生過程に及ぼす影響を解明するために、実験動物ならびに培養骨格筋細胞を用いて、乳酸による損傷骨格筋の応答、乳酸の骨格筋形成への影響を検討した。 本研究は2年計画で実施され、本年度はその2年目の最終年度に当たる。骨格筋再生時には筋衛星細胞由来の筋芽細胞が融合し、筋管細胞を経て新たな筋線維が形成される。そこで、本年度の検討項目は、乳酸が骨格筋形成に及ぼす影響とした。実験対象には、培養骨格筋細胞を用い、乳酸が筋芽細胞の融合ならびに筋管細胞の形成に及ぼす影響を検討した。培養骨格筋細胞に乳酸ナトリウムを添加し、免疫組織染色法により、乳酸投与後の骨格筋細胞像ならびに筋管細胞内核数の変化を確認した。分化培地への乳酸添加により、筋管細胞直径および筋管細胞内核数が有意に増加した。また、ウェスタンブロット法により、骨格筋形成に関わるErk1/2シグナルの応答を解析した。乳酸添加後にErk1/2リン酸化レベルおよびp90RSKリン酸化レベルの増加が認められた。以上より、乳酸はErk1/2シグナルを活性化させることで、骨格筋の形成を促すことが示唆された。
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