研究課題
足部や体幹部のマーカ装着位置を再検討し,健常者での歩行計測の再実験を行った.直線歩行時の身体重心位置の前後成分と鉛直成分は概ね相関係数0.8以上,NRMSE10%以下の精度が得られたが,左右成分は誤差が大きくなった.そこで,センサ座標系をグローバル座標系に変換する行列の誤差を調査した結果,足部位置軌跡の左右成分の誤差と座標変換行列の特定の成分の誤差に正の相関が見られ,さらにその成分の誤差と初期値の誤差に正の相関が認められた.この結果から,他のセンサの追加を含め,クォータニオン推定法を検討し,初期値の推定を正確に行う必要があることを確認した.また,センサの仕様をもとにした計算から,最大3cmの足部位置の誤差が生じる可能性が予想された.この誤差を身体重心位置の誤差に換算すると最大2.3cm程度となり,直線歩行中の身体重心の左右成分の動作範囲と比較すると,座標変換行列に関する誤差を無くす必要があると考えられ,現状では左右成分の運動評価への応用は難しいと考察された.一方,実用性と足部位置軌跡の推定精度の改善のため,ニューラルネットワークによる足部運動区間の自動検出法を検討し,足部位置軌跡の自動算出法への応用可能性を確認した.これらの結果を踏まえ,前後及び上下成分の利用に着目し,足部・下腿部・大腿部・体幹部の簡単な校正法を採用することとし,健常者の直線歩行計測を行い,身体重心位置軌跡の運動評価への応用可能性を検討した.鉛直成分の振幅が速度の増加に伴い増加する傾向が全被験者でみられ,また,鉛直成分の軌跡の形状は山型と直線型の増加に大別されることを確認し,その形状の違いには,膝関節や下腿部の使い方が関わっている可能性があることが考察された.以上のように本研究では,慣性センサによる身体重心位置推定法を提案し,実験的検討から利用可能性を明らかにし,運動評価への応用可能性を示す結果を得た.
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Proceedings of the 41st Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
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Proceedings of the 2018 IEEE Life Sciences Conference
巻: - ページ: 211~214
10.1109/LSC.2018.8572202
電子情報通信学会技術研究報告
巻: 118 ページ: 1~4