研究課題
従来の歩行アシストロボットは、下肢(脚運動)に直接的に駆動力を加えるため、歩行の不自然さやトラブル時の転倒危険性の問題が指摘されてきた。そこで本研究では上肢運動(腕振り)リズムを介して間接的に下肢運動(歩行)リズムを安定化させることで、転倒危険性の低い安全な歩行アシストロボットを世界で初めて開発する。つまり、上肢と下肢のリズム相互同調のなかで、上肢運動リズムの制御を介して歩行の全身体的な安定化を誘導するものである。具体的には、上肢(腕)と下肢(脚)がCPG神経系を介して相互作用することに注目し、上肢運動リズムへの介入から下肢運動リズムに間接的に影響を与えることで、歩行運動の全身体的な動的安定化を実現できる歩行アシストロボットの開発をめざした。平成29年度は、前年度の成果を踏まえ、歩行障害への適用とその有効性評価に取り組んだ。特に、上肢と下肢のリズム同調によって生成された歩行運動の動的安定性を評価するために、歩行時の腰軌道や足首軌道の時系列データに注目した。これは腰部や足首に装着された加速度センサを用いて算出される軌跡であり、この軌道の幾何学的特徴や動的システムとしての時間的相関に基づいて安定性を定量的に評価する方法を開発したのである。さらに歩行アシストロボットをパーキンソン病の加速歩行や脳卒中の片麻痺歩行に適用し、上記の評価手法を適用することで、上肢運動リズムを介して間接的に下肢運動リズムを安定化させる歩行アシストロボットの臨床評価も実現できた。これらの結果は歩行安定化に向けて提案手法が有効であることを示している。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究目標は、歩行の安定性の評価手法の開発と、それを用いた歩行アシストロボットの臨床評価であるが、そのいずれにも基本的に成功している。その結果、おおむね想定通りの成果を達成することができた。
上記のように本年度の目標は基本的に達成できているが、臨床評価における患者数に若干の不足がある。本研究を投稿論文として仕上げるためには、サンプル数を現状の10数例から50例以上に増加させる必要がある。
(理由)歩行の安定性評価の指標の確立に想定以上の時間を要し、臨床評価における十分なサンプル数を集める時間が不足した。そのため年度内に臨床データの収集が完了せず、次年度に繰り越すこととなった。(使用計画)実験方法やデータ分析の方法は既に確立している。そのため次年度において臨床データのサンプル数を10数例から50例以上になるように臨床評価試験を継続することになる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
ヒューマンインターフェース学会論文誌
巻: vol.20, No.1 ページ: 89-98
https://doi.org/10.11184/his.20.1_89