研究課題/領域番号 |
16K12952
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
稲岡 プレイアデス千春 金沢大学, 保健学系, 助教 (90507386)
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研究分担者 |
淺井 仁 金沢大学, 保健学系, 教授 (50167871)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 立位バランス / 上肢支持 / 測定装置 |
研究実績の概要 |
平成28年度には上肢の支持も可能としながら立位バランスを評価する新たな評価装置を開発した。健常若年者を対象として、手すりが設置された床反力計を用いて足圧中心動揺と手すりにかかる力の測定を行い、方法および項目の妥当性を検討した。不安定な立位条件では、手すりにかかる水平方向の力は大きくなると仮定した。被験者は男女15 名とした。足圧中心動揺の測定は手すりを設置した床反力計を用い、手すりにかかる力の測定には手すり3分力測定システムを用いた。測定条件は両脚、片脚立位の2 条件と開眼、閉眼の2 条件をかけ合わせた4 条件とした。足圧中心動揺の総軌跡長は、開眼時、閉眼時ともに両脚立位時よりも片脚立位時の方が有意に大きかった。各条件を比較すると、閉眼・片脚立位時が最も大きく、開眼・両脚立位時が最も小さく、両者間に有意差が認められた。手すりにかかる3方向の力に対する水平方向の力の占める割合については、開眼時、閉眼時ともに両脚立位よりも片脚立位の方が有意に大きかった。また、開眼・両脚立位時よりも閉眼・片脚立位時の方が有意に大きく、閉眼・両脚立位時よりも開眼・片脚立位時の方が有意に大きかった。足圧中心動揺の総軌跡長は、片脚立位時の方が大きかった。これは、片脚立位時の方が支持基底面が小さく、安定性が低下するためと考える。また、各条件を比較した際に閉眼・片脚立位時が最も大きく、開眼・両脚立位時が最も小さかった。閉眼・片脚立位では支持基底面が小さく、さらに視覚的情報が遮断されたことにより安定性が低下したと考える。手すりにかかる3方向の力に対する水平方向の力の占める割合については、足圧中心動揺の総軌跡長が増加する条件で大きくなった。これは、立位姿勢が不安定になるほど上肢の支持によって不安定性を代償しようとするためと考える。以上より、仮説は支持されたため、測定方法および測定項目は妥当であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に手すりが設置された床反力計を開発し、それを用いて健常若年者を対象に不安定な片脚立位時の足圧中心動揺と手すりにかかる力の測定を行い、測定方法および測定項目の妥当性を健常若年者を対象に検討した。おおむね順調に進展しているが予算上、当初予定していた荷重センサーを4隅に配置することができず、三角形の配置となった。手すりの位置も当初計画していた両側ではなく片側の配置となった。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に作成した評価装置による評価の妥当性、信頼性の検討の為、健常高齢者及び片麻痺患者(自力で立位を保持できる・できない)を対象に当該機器を用いて測定を行い、測定方法、および測定項目の妥当性を検討する。 手順は①全被験者を対象にBerg Balance Scale(BBS)を用いて立位および歩行能力等を評価する。②健常高齢者および自力で立位保持ができる片麻痺患者を対象に、上肢支持をした場合としない場合の立位保持の1分間の測定をそれぞれ3回ずつ行う。③健常高齢者と自力で立位保持ができない片麻痺患者を対象に、上肢支持をした場合の立位保持の1分間の測定を3回行う。 分析は1)全被験者を対象に実施したBBSのスコアを算出する。2)健常高齢者および自力で立位保持ができる片麻痺患者を対象に行われた上肢支持をした場合としない場合の立位保持の1分間の測定の結果(床反力計および上肢支持部位での動揺軌跡長、動揺面積、FFT周波数解析、両者間の相互相関等)を算出する。3)健常者と年齢を一致させた自力で立位保持ができない片麻痺患者30名を対象に行われた上肢支持をした場合の立位保持の1分間の測定の結果(床反力計および上肢支持部位での動揺軌跡長、動揺面積、FFT周波数解析、両者間の相互相関等)を算出する。4)全被験者を対象に実施したBerg Balance Scale/BBSのスコアと測定の結果(床反力計および上肢支持部位での動揺軌跡長、動揺面積、FFT周波数解析、両者間の相互相関等)との関係について検討する。5)健常者と年齢を一致させた自力で立位保持ができない片麻痺患者30名を対象に、BBSのスコアに対する上肢支持をした場合の立位保持の1分間の測定の結果(床反力計および上肢支持部位での動揺軌跡長、動揺面積、FFT周波数解析、両者間の相互相関等)の検出力、分解能の高さについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算上、計画していた評価装置は当初予定していた荷重センサーを4隅に配置することが困難になり、三角形の配置となった。さらに、手すりの位置も当初計画していた両側ではなく片側の配置となり、評価装置予算額が大幅に減少し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
データ解析をより簡便に行うには専用の解析ソフトが必要であり、次年度使用額87,949円を加えた予算で購入する予定である。
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