研究実績の概要 |
従来、立位姿勢の評価では、足圧中心動揺を計測するなど計測機器により客観的に評価する場合、および動的な立位姿勢を評価する場合は、立位の保持が自力で可能な対象者に限られていた。この問題に対して上肢の支持も可能としながら立位バランスを評価する新たな評価装置を開発した。平成29年度の目的は当該機器を用いて健常高齢者及び片麻マヒ患者を対象として測定を行い、測定方法、および測定項目の妥当性を検討することであった。立位バランス測定機器の測定と共に臨床の現場で多く用いられているバランス評価法の Berg Balance Scale(BBS)とTimed up and go Test (TUG)も実施した。不安定な立位条件では、足圧中心動揺と手すりにかかる力は大きくなり、健常高齢者よりも片マヒ患者に大きくなると仮定した。被験者は健常高齢者16 名と片マヒ患者20名とした。足圧中心動揺と手すりにかかる力の測定を行った。測定条件は手すり有+両脚立位の開眼条件(A)と閉眼条件(B)、手すり無し+両脚立位の開眼条件(C)と閉眼条件(D)、手すり+手すり同側の片脚立位(E)と手すり+手すり反対側の片脚立位(F)とした。両群とも手すり+両脚立位であれば(A,B)開眼・閉眼に動揺の差も無く、他の条件と比較し、より安定していた。手すり+片脚立位条件(E,F)では片マヒ患者の動揺が健常高齢者より有意に大きかった。手すりにかかった力に関しては、片マヒ患者ではF条件に最もかかっており、健常者よりも優位に大きかった。健常者ではTUGと年齢に相関があり、患者グループではBBSとTUGに強い相関が検出された。手すりとBBS・TUGの相関は患者グループで最も不安定のF条件で手すりの左右の力、上下の力、手すりにかかった全体の力と負の相関を示した。即ち、BBSのバランス評価が悪い人ほど手すりにかけた力が大きくなった。
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