研究課題/領域番号 |
16K12955
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
伊藤 安海 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40356184)
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研究分担者 |
大賀 涼 科学警察研究所, 交通科学部, 室長 (50392262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 健康起因事故 / 高齢者QOL / 交通事故解析 / 交通事故データベース / 運転支援技術 / ヘルスモニタリング |
研究実績の概要 |
高齢者における重大疾病発症の予防対策の一つとして、健康起因事故データベースの構築を行い、健康起因事故を起こした高齢者の予兆行動を分析し、高齢者の生活行動から健康リスクを的確に予測可能なシステムの開発を目指している。 平成29年度は昨年度に引き続き健康起因事故の国内における発生状況を調査した。これまでの警察情報に加え新聞記事や裁判を傍聴することで情報の入手ルートを増やして事故情報を把握し、調査可能な事故の選定を行ったうえで、検察庁で公開されている確定記録に対して閲覧を請求し、交通事故に関する各種資料(実況見分調書、検視調書、診断書、鑑定書、供述調書等)の入手を行った。 さらにこれまで入手した交通事故データのうち車両挙動の解析に十分なデータが揃っているものに関しては交通事故解析ソフトウエア(PC-CRASH)等を用いた工学的な解析を行い、より詳細な事故状況の把握を行った。 これまでに入手した交通事故資料のデータベース化に関しては昨年度ミシガン大学ICAMに訪問して入手した米国NASS-CDSのデータベース作成要領に基づいて主要な項目を決定し、タグ付けの対象項目の洗い出しを行ったうえで、基本構造の構築を行った。 なお、入手した資料のうち供述調書には病気や障害に関連した貴重な情報が含まれているものの、記載内容や記載方法に一貫性が無く、長い供述のなかから有用な部分を抜き出すためには高度なスキルが必要となるため、医学系や社会学系の専門家の協力を受けてデータ化に向けた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健康関連項目を供述調書から読み解くための検討に時間を要したため、それらの項目を加えることはできなかったものの、それ以外のデータベース構築の基本作業に関しては、当初の計画どおり進めることができた。 事故データの入手に関しては警察情報に基づくデータの入手を平成28年度に前倒しして行ったため、新たな事故の洗い出しに苦労したが、山梨県内の事故に関して、新聞記事検索と裁判傍聴を併せて行うことで事故の詳細情報(事件発生日時、被疑者氏名等)を収集し、検察庁に確定記録の閲覧・複写を依頼するシステムを新たに構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は新たに開発した交通事故情報収集システム(新聞記事検索と裁判傍聴を組み合わせて詳細情報を収集する仕組み)を静岡県や長野県といった近県にも活用してデータベース化する事故データの件数を増やす。 データベースの構築・分析に関しては、平成29年度に引き続きデータベースの構築を行い、完成後にデータベースを用いた初期的な分析を行う。特に、車両のふらつきや事故時の乗車姿勢といった詳細な交通事故解析結果と健康・障がいや服薬状況といった供述調書等から収集したデータの関係性についての分析については、入力データの精度を必要に応じて調整して関係性を探る。 これらの成果を国内学会、国際学会で発表すると同時に投稿論文の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度は山梨県内の交通事故情報の収集が主となったため、旅費の使用が少額で済んだ。また、供述調書に含まれる健康関連情報のデータ化の検討に時間がかかったため、データベースへ健康関連項目を作成することができず、健康関連データの入力が行えなかった。
(使用計画)繰り越した予算は、平成30年度の山梨県外の事故データ収集のための旅費とデータベースへの健康関連項目の入力作業(人件費)として使用する予定である。
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