研究課題/領域番号 |
16K12959
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福田 博也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90294256)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 歩行リハビリテーション / 床反力計測 / 足圧中心軌跡 / フォースセンサ |
研究実績の概要 |
本研究では,「歩き方」や「走り方」を定量的に評価するために,市販の安価なフィルムセンサを組み合わせて,歩行中の足底荷重分布,足圧中心軌跡,足部アーチなどの変化の様子がリアルタイムで確認できる,インソール型歩行無線計測システムの開発を目的としている。本年度の取り組みと得られた成果は次の通りである。 (1) 歩行計測インソールの開発 ― 床反力の前後・左右成分が計測できるフィルム状フォースセンサを考案し,市販の小型 3 軸力覚センサの実測値と比較するなどして,その基本性能を評価した。前後・左右成分のセンサ出力が鉛直成分の影響を受ける場面もみられたが,新しい補正方法を導入することにより,インソールへの実装に際して必要な性能を引き出すことができた。考案したフィルム状フォースセンサを前年度に製作した鉛直床反力および足圧中心軌跡が計測できるインソールに組み込んで,「3 軸床反力計測インソール」とした。 (2) 曲率センサの開発 ― 考案した床反力の前後・左右成分が計測できるフィルム状フォースセンサの原理を応用して,足部アーチの変化を計測するための曲率センサを製作した。評価実験の結果から,実用化できるまでの性能を十分に引き出せなかった。しかしながら,問題点が明らかになったことにより今後に向けての見通しが立った。 (3) 被験者実験による歩行計測インソールの評価 ― 開発した「3 軸床反力計測インソール」を用いて,歩調や床面環境(平地,傾斜など)を変化させたときの 3 軸床反力を計測した。被験者実験の結果からは,実用化できるまでの性能を有していないと考えられるが,履物内で起きる様々な問題点が明らかになったことにより今後に向けての見通しが立った。
考案したフィルム状フォースセンサの原理と構造の一部は,今年度の研究成果として学会にて公表したが,雑誌論文(査読付)に掲載されるまでには至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歩行中の床反力の鉛直,前後・左右成分が計測できる「3 軸床反力計測インソール」はほぼ完成したが,歩調や床面環境(平地,段差,傾斜,不整地)を変化したときの被験者における評価実験の結果からは,実用化できるまでの性能を有していない。また,足部アーチの変化を計測するための曲率センサの開発においても,実測値との比較からは,実用化できるまでの性能を引き出せていない。しかしながら,実用化レベルでの様々な問題点が被験者実験により明らかになったことにより今後に向けての見通しが立った。
本年度に取り組むべき検討課題や製作はおおむね計画どおり進めることができたが,本研究を進めていく段階で類似の機能を持った既製品,研究報告,研究論文が新たにみられたこともあり,研究全体としてはやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
考案した「3 軸床反力計測インソール」と製作した足部アーチの変化を計測するための曲率センサが実装・実用化できるまでの性能を引き出すためには,装着時の足部の構造変化をも考慮した形で追加実験を行う必要がある。これらは,複数の被験者の協力を得て収集したデータと他の測定器で得られたデータとの比較・検討するという流れで進めていくことになる。歩行リハビリテーションなどの現場にいて日常的かつ手軽に利用できるように,スマートフォンやタブレット端末において可視化するためのソフトウェアの構築に際しては,生体情報の無線計測に関する技術革新と進歩は目覚ましいため,常に最新の研究情報を得ながら進めていくことになる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
歩行中の床反力の鉛直,前後・左右成分が計測できる「3 軸床反力計測インソール」はほぼ完成したが,歩調や床面環境(平地,段差,傾斜,不整地)を変化したときの被験者における評価実験の結果からは,実装・実用化できるまでの性能を有しなかった。また,足部アーチの変化を計測するための曲率センサの開発においても,実測値との比較からは,実用化できるまでの性能を引き出せなかった。そのため,被験者実験の規模が限定的なものとなった。また,歩行リハビリテーションやスポーツ工学分野における本研究課題に関係する技術革新は目覚ましく,開発を進めていく段階で類似の機能を持った既製品,研究報告,研究論文が新たにみられたため,常に最新の研究情報を得ながら慎重に研究を進めていくことが望ましいと判断し,研究開発の一部を次年度に行うとしたこと,さらに,研究成果の公表と雑誌論文への執筆・投稿が遅れたことによる。
上記理由により,開発に関わる物品費,被験者実験に関わる人件費・謝金,研究成果公表のための旅費や雑誌論文への投稿・掲載料などを翌年度分として繰り越した。
|