本研究では,「歩き方」や「走り方」を定量的に評価するために,市販の安価なフィルムセンサを組み合わせて,歩行中の足底荷重分布,足圧中心軌跡,足部アーチなどの変化の様子がリアルタイムで確認できる,インソール型歩行無線計測システムの開発を目的としている。本年度の取り組みと得られた成果は次の通りである。
(1) 日常的に利用可能な簡易型歩行無線計測システムの構築 ― 歩行分析に必要な加速度,角速度などの物理量と得られた歩行データ列を同期させて,Wi-Fi による無線通信を用いてリアルタイム計測した。パソコンで収集したデータ列は,C 言語で作成したアプリケーションにより,リアルタイムで画面表示した。画面サイズの小さいスマートフォンで表示するために,表示項目を絞るなどの工夫をした。 (2) 異なる歩行環境・条件下での被験者実験によるシステムの有用性の検証 ― 異なる歩調や床面(平地,傾斜),履物を用いたときなどの条件下で被験者実験を行い,床反力・足圧中心軌跡計測インソールの実際応用上の有効性について検証した。床反力波形の各特徴点における誤差,足圧中心軌跡の誤差は 5%~10% であった。誤差の原因は市販のフォースセンサの性能によるものであることがわかった。得られた研究成果の一部は他の生体計測にも応用し,雑誌論文(査読付)に掲載されることとなった。
足部アーチの変化を計測するための曲率センサの開発では多くの課題を残したものの,開発した簡易型歩行無線計測システムの有用性を,健常者だけでなく高齢者や障害者のような下肢疾患者で確認できれば,歩行分析の発展は勿論のこと,例えば,高齢者の転倒メカニズムの解明や高齢者のための生活空間や住宅の設計に貢献すると思われる。
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