最終年度では、2016年度から2018年度に行った研究知見の公刊とそれをもとにした評価法開発の方向性を探るための研修参加に研究費を使用した。 本研究は、厚生労働省が2015年度に介護予防政策を見直し地域リハビリテーション活動支援事業を始めたことで、作業療法士が住民運営の通いの場でどのような知識・技術を提供し、役割を発揮すべきなのかを明確にし、地域作業療法学の知識・技術を体系化し、その評価法を開発することが目的であった。 最終年度以前の研究成果として次の2点がある。1点目は、ソーシャルキャピタル概念、Population Health分野における作業科学の知見をもとに、ヘルスプロモーションを促進する地域在住高齢者への作業療法士による間接的支援の支援構造について考察したことである。2点目は、住民運営通いの場づくりにボランティア養成講座講師として当初から関与してきた作業療法士へのインタビュー調査結果を帰納的に分析することにより、地域在住高齢者のヘルスプロモーションをどのように間接的支援してきたかを考察したことである。 以上より、住民運営の通いの場は、人を作業的存在として捉えたとき、健康志向性を持った、高齢者の誰をも受け入れるbelonging(所属) を用意し、ソーシャルキャピタルを育成するdoing(活動) を提供しているplace (場)であると整理できた。そして作業療法士の役割は、①サロンの企画・運営の支援、②ボランティア養成講座の講師、③サロン実施の際のサポートと振り返りの助言、④サロン参加者の評価と行政へのフィードバックの4点が明らかになった。 最終年度は、作業療法士の関与の効果性の評価法を考案するために研修に参加した。その結果から、作業療法士とボランティア・サロン参加者との円環的でより有機的な相互作用に着目した形成的評価を可能にする発展的評価モデルが適合すると考えた。
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