研究課題/領域番号 |
16K12967
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松林 勝志 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (80239061)
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研究分担者 |
山下 晃弘 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 助教 (80589838)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / ナビゲーション / RFID / ディープラーニング / SLAM |
研究実績の概要 |
UHF帯RFIDを用いて,視覚障害者が職場で安心・安全に働くことができ,視覚障害者が他の障害者や健常者と,気軽にコミュニケーションを取ることができ,安全に職場内を移動できるシステムの構築を行っている。 当初,民間企業との協力を得ることで合意していたが,ビル所有者との交渉がうまくいかず,都立八王子盲学校で実証実験をさせていただくこととなった。盲学校の要望で,教室・体育館・食堂・職員室・トイレ等,すべての部屋について,15cm角の点字標識を取り付けた。点字標識の裏にはRFIDタグを貼り付けている。点字標識のピクトのデザインについて,全盲でない視覚障害者がハレーションを起こしにくい色・デザインについて提案があり,市販のピクトで対応できなかったため,すべてオリジナルで作成した。 スマートフォンと接続したRFIDリーダによりタグを読み取り,音声によりナビゲーションを行うシステムは,鞄に入れ,視覚障害者が肩にかけて運用することを予定していたが,大きくて重い・面倒との意見が出され,ハードウェアの小型化に取り組んだ。現在までに少し大きめの懐中電灯サイズにまで小型化できたが,予定外の作業だったため,実際の実証実験についてはこれからスタートする。 実証実験そのものは遅れたが,次年度の研究内容を先んじて取り組んだ。RFIDによる事故位置推定は障害物を見つけられないため,v-SLAMによる障害物検知を試み,研究室内で様々な障害物を避ける経路の作成に成功している。さらにDeep Learningによる点字ブロックの学習・認識についても基礎実験を行った。撮影した画像を細かく分割し,その中から点字ブロックの存在する画像と存在しない画像をCNNモデルで学習させ,未学習のデータについて正答率を検証している。正答率を高めるための画像情報の効果的な前処理について様々な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証実験については開始できなかったが,次年度実施予定の障害物検知とDeep Learningを使った画像認識技術の応用については先んじて研究を進めることができた。 実証実験の対象となった,都立八王子盲学校との打ち合わせにおいて,点字標識に対するデザインの要望が,全盲以外の人に配慮するものであったことは想定外であり,点字標識のピクトをオリジナルでデザインすることになり想定外の時間の要した。また装置を預け盲学校で使ってもらえるようにするためには,装置の小型化と使い勝手の簡便化は必須であり,その改良にも時間を要した。反面,次年度実施予定のv-SLAMを使った障害物検知については良好な結果が得られており,今後実装するための検討を進める。Deep Learningを用いた点字ブック検出についても,先に実験を進めており,学習における画像データの有効な前処理について検討を行っている。今後点字ブロックだけでなく,オフィス内で仕事で使用する物品の学習についても検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後,盲学校での実証実験を行う。現在,盲学校のすべての部屋の前にRFIDタグと点字標識を貼り付けた。それでも実証実験のためには,RFIDタグの数が足らないので,廊下に沿って数百枚貼り付けさせていただくことになっている。また建物内の詳細なマップについてはすでに製作を終えており,建物内を案内するシステムについてはデータがそろいつつある。屋内の実環境での実証実験は初めてであり,特に輻射波によるRFIDタグの検出(近くにないタグを検出したり,後方のタグを検出してしまうなど)について,対策を施した上で,実証実験を行う。 v-SLAMによる障害物検知は基礎研究は良好な結果をすでに得ているので,実証実験を行うための準備を進めたい。Deep Learningについても点字ブロックの他,点字標識やオフィスで使用する事務機や事務用品の学習について研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究で使用するRFIDタグについて,関係する企業から一部ではあるが実物の寄贈があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
システムの小型化に必要となった,3Dプリンタのフィラメント及び,数が足らなくなると予想されるRFIDの追加購入に充てる予定である。
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