研究課題/領域番号 |
16K12969
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
宮崎 真 静岡大学, 情報学部, 教授 (30392202)
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研究分担者 |
木村 岳裕 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (50632254)
林 正道 大阪大学, 国際医工情報センター, 特任助教(常勤) (50746469) [辞退]
竹内 成生 上武大学, ビジネス情報学部, 准教授 (10329162)
関口 浩文 上武大学, ビジネス情報学部, 教授 (20392201)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 主観的同時性 / 同時性判断 / 心理物理学的測定 / 脳機能測定 |
研究実績の概要 |
本年度の主たる成果として,非同時性の陽性残効の発見が挙げられる (斉藤ら & 宮崎. 2019, 日本神経科学大会発表予定, Widjaja et al. & Miyazaki. 2019, Soc Neurosci, 投稿中).この実験では,参加者の両手に二連の触覚刺激組を呈示した.最初の刺激組は適応刺激として呈示し,二番目の刺激は検査刺激として呈示した.この単一適応刺激を用いた実験の結果,参加者が事前に非同時の刺激組を受けると,その後の刺激組を非同時と判断する確率が高まった.すなわち,陽性残効が生じていた.この非同時刺激に対する陽性残効は,最適ベイズ推定モデル (Koerding & Wolpert. 2004, Nature; Miyazaki et al. 2006, Nat Neurosci) による予見と一致する.その一方で,参加者が事前に同時の刺激組を受けた場合では,その後の同時性判断に変化は認められなかった.すなわち,その陽性残効は適応刺激が非同時のときのみに生じた.このことから,表裏一体のように思われる“同時”と“非同時”の検知が全く同一の神経過程によって成さているわけではなく,同時,非同時の検知のいずれかもしくは双方に異なる神経過程が関与している可能性が示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに機能的磁気共鳴画像計測により,同時性判断の関連脳部位を特定した.さらに,SPM等の従来の脳機能画像検定手法では疑陽性の結果が生じる可能性があるとする注意を促す論文 (Eklund et al. 2016, PNAS) が報告されたが,Statistical NonParametric Mapping (SnPM) を用いても同様の関連脳部位が検出されることを確認し,統計的信頼性を補償する結果も得た.また,上記の非同時性の陽性残効の例にみるように,本研究計画で目標の一つにあげていた,仮説にとらわれない探索的アプローチによる新たな心理物理学的現象の発見も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られてきた脳機能測定による研究を論文として刊行する (Kimura et al. & Miyazaki. under revisions).新たに発見された非同時性の陽性残効についても国内外の学会で発表し,さらに論文刊行を目指す.また,fMRIの実験データを更に分析し,上記の単一適応刺激を用いた実験の結果から示唆された「“同時”の検知と“非同時”の検知のいずれかもしくは双方に異なる神経過程が関与している可能性」も検証していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
同時性判断の神経基盤に関する論文を国際オープンアクセス誌に投稿した結果,改定後に採択可能となったが,その対応に時間を要し,刊行が次年度へと持ち越しとなり,その英文校正/出版経費が必要となった.また,非同時性の陽性残効という新たな心理物理学的現象を発見し,その学会発表のための経費も必要となった.以上の経費のため,次年度使用額を割り当てた.
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