研究課題/領域番号 |
16K12972
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
古屋 晋一 上智大学, 理工学部, 准教授 (20509690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経頭蓋磁気刺激 / 調音結合 / 大脳皮質運動野 / 連続運動 |
研究実績の概要 |
本研究は,閉ループ経頭蓋磁気刺激(TMS)システムを開発し,連続動作の制御に関わる神経機構と可塑性の仕組みを明らかにすることを目指す.身体動作を計測するセンサとマイコンを用いて,楽器演奏中の特定のイベントの前後で大脳皮質運動野に非侵襲のTMSを印加する.皮質興奮性の時系列変化を評価することにより,運動野の局所神経回路のダイナミクスを同定する.さらに,連続動作において,特定の筋を支配する運動野の錐体細胞群の皮質興奮性が,①後続動作,②感覚フィードバック,③運動速度(テンポ),④長期訓練によって受ける影響を明らかにする. 平成28年度は,初めに閉ループ型経頭蓋磁気刺激システムの開発を行った.ポジションセンサ―とマイコン(Arduino)を繋ぎ,マイコンではセンサーからの運動情報がTMSを駆動するトリガー信号となるよう,ミリ秒オーダーで制御できることを確認した.さらに,センサーからの入力信号とトリガー信号を送る出力信号の間のタイムラグを自在に制御できるように設定した. 次に,当該システムを用いて,ピアニスト3名を対象に,ピアノ演奏中に大脳皮質運動野を刺激するための,刺激強度の調整を行った.Active Motor Thresholdの1.2倍で刺激すると,運動誘発電位が見られる他,動作の遂行が妨げられないことを明らかにした. その後,様々なメロディを異なるテンポで演奏する予備実験を,ピアニスト3名,非音楽家3名を対象に実施し,非音楽家でも演奏可能なメロディとテンポの選定を行った.同時に,演奏時に得られた手指の内在筋の運動誘発電位を解析するプログラムの作成を行った. その後,本実験として,ピアニスト6名,非音楽家6名を対象とした実験を行った.その結果,我々の仮説とは異なり,ピアニストの方が非音楽家よりも,大脳皮質運動野の興奮性が音列によらずに低い値のまま保たれることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書には,今年度の進捗予定として,(2016年4月~6月)システム開発,実験環境セットアップ,(7月~10月)予備実験,解析プログラム作成,実験デザインの最終調整,(11月~2017年3月)本実験の実施と記述しているが,全てこの通りに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,計画書にある通り,本実験を継続し,実験の被験者数を増やす.さらに,当初の予定にはなかったが,打鍵動作を詳細に計測することで,大脳皮質運動野の演奏時のダイナミクスが,ピアニストと非音楽家で異なる現象を,運動情報によって説明することを試みる.その後,学術論文を執筆し,国際学術誌に投稿し,年度内の掲載を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
多数の被験者に複数回来てもらう実験を行う必要が出てきたため,本実験を実施する次年度の使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
被験者謝金および論文出版諸費用(オープンアクセス含む)
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