研究課題/領域番号 |
16K12975
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
板谷 厚 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40649068)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組体操 / 姿勢制御 / 感覚統合機能 / 視覚 / 足圧中心動揺 |
研究実績の概要 |
本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする. 当該年度は,組体操の運動効果として,姿勢制御にかかわる感覚統合機能の発達促進に着目し,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対する影響を検討した.特に,視覚入力に対する依存が低下することを実証することを試みた.具体的には,三人で行う簡単な組体操を実施し,その前後に開眼条件(EO)と閉眼条件(EC)における静止立位動揺を調査することで,立位制御における視覚入力に対する依存性が低下するかどうか検討した. 若年成人女性15名を対象とした.対象者は3人一組で実験に参加した.まず各参加者はEOとECで30秒間の静止立位をそれぞれ2回ずつ実施し,足圧中心(COP)軌跡を記録した(pre).その後,3人組で行う組体操(ピラミッド,サボテンおよび扇)を,各対象者がすべての役割を経験するよう3回ずつ実施した.休憩の後,再び静止立位を実施した(post).COPの動揺速度を算出し,これらからロンベルグ率(EC / EO)を求めた. 反復測定分散分析の結果,動揺速度において視覚条件×測定時間の交互作用に有意性が認められ,ECのみpostで低下した(p = .009).対応のあるt検定の結果,ロンベルグ率はpostでpreより低下した(p = .018).これらの結果から,組体操は立位制御における視覚入力に対する依存性を低下させ,その他の感覚入力に対する依存性を高めることが示唆される. したがって,組体操は,接している相手の身体の動きを感じながら姿勢を調節する,すなわち,体性感覚入力を積極的に用いる活動であり,子ども達の感覚統合機能の発達を促すと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的としている. 当該年度は,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対する即時効果の検討を計画していた. 現在まで,成人を対象に,簡単な組体操によって,視覚入力以外の感覚入力,特に体性感覚入力により依存した姿勢制御に変化することを実証することに成功している.この結果から,姿勢制御にかかわる感覚統合機能の発達促進に効果的であることが示唆される. したがって,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討する.このために,健康な大学生を対象者として,トレーニング群(トレーニングとして組体操を行う)および対照群(トレーニングなし)に分け,介入実験を実施する.対象者は三人一組で実験に参加する.実験はpre測定,トレーニング介入(対照群はトレーニング介入なし),post測定およびトレーニング効果が保持されるかどうかを確認するための保持測定の順に実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定機器の購入のために前倒し請求をした結果,差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
実験被験者の謝金および研究発表のための旅費とする.
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