剣道の面白さは、対人攻防にあると考えられるが、攻防するための基本的な運動は初心者にとって習得困難であり、習熟する前に試合(対人攻防)に移行せざるを得ない。そのようなことも剣道志向が少ない要因の一つになっていると考えられる。 そこで、基本的な運動を「面打ち運動」ととらえ、「面打ち運動」を簡単で早期に習得できる指導法を確立し、現場において剣道経験のない教員でも指導できる練習方法が考案されることが重要である。そこで、物理学的法則に着目し、剣道の「面打ち運動」に効果的に働く運動原理を検討し、①棒倒し効果、②エレベーター効果、③作用・反作用効果、④二段ブレーキ効果、⑤シーソー効果、⑥支点移動効果、⑦内旋効果の7つの効果を明らかにした。この7つの効果は、剣道に関わらず多様なスポーツの運動技術の習熟に関わる理論として、今後のスポーツの技術指導に大きく貢献できる7つの効果を基に練習法を開発し、主に大学の授業等において、実験によって多様に試行した。試行後の運動形態の変化や、被験者の意識の聞き取り等から、「跳ね上げ」(二段ブレーキ効果とシーソー効果を有効に実現できる。また、内旋効果も有効に実現できる。)と「盤踊り」(蹴りと振り下ろしを充実したものにするための運動で、作用反作用を有効に実現できる。)。の練習法が指導において有効な方法であることがわかった。 また、今回は台湾、フィンランドにおいて理論講習と実技講習をおこない、海外の剣道愛好者と種々検討し、理解を得た。とくに、物理学的視点からの効果の説明は、中国語と英語でなされ、今後の海外での講習や指導書作成において、貴重な資料となるであろう。
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