海外においては武道を通して“日本”を知ろうとする人が多く、武道の文化的側面に関する知的な情報が求められている。本研究は、こういった海外の要求に応えるため、従来の文章や言語による伝達ではなく、絵画や映像といったビジュアルを通して受け手の感性に訴えかけつつ武道文化を伝えようとするものである。こういった活動は極めて少なく、緒に就いたばかりであり、挑戦的萌芽の段階にあるといえる。具体的には、酒井(代表者)の最先端研究成果について、外国人が分かりやすいように究極まで平易化し、ビジュアル化してこれを発信しようとするものである。 本年度は特に、映像「東京高師五行之形」を作製した。「五行之形」とは、古く一刀流中西派四代の中西忠兵衛子正が小野派一刀流六十本の組太刀、刃引、小太刀、五点を修め、さらに位、技、拍子、間合のすべてを修得した後、その秘奥を新しく組合せ、編み出したもので、中西流では古くから修練されていたものである。その後、この中西派の流れをくみ現代剣道の父といわれる高野佐三郎範士が東京高等師範学校体育科の剣道主任教授となられた時に、この「形」を将来、教師として教えやすく、また、学生としては学びやすいように研究、工夫、創成して、新しく「東京高等師範の五行之形」として発表され、指導、教授されて現在に伝えられたものであり、武道文化史のなかでは非常に重要なものである。今回は特別にこの流れを正統に継ぐ佐藤成明範士(筑波大学名誉教授)の指導・監修により撮影・編集をすることができた。 また、写真に見るルーマニア剣道の歴史/History of Kendo in Romania through picturesをバイリンガルで編集しBudo Worldで発信した。(https://budo-world.taiiku.tsukuba.ac.jp/en/category/videos-photos/)
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