海外においては武道を通して“日本”を知ろうとする人が多く、武道の文化的側面に関する知的な情報が求められている。本研究は、こういった海外の要求に応えるため、従来の文章や言語による伝達ではなく、絵画や映像といったビジュアルを通して受け手の感性に訴えかけつつ武道文化を伝えようとするものである。 本年度は、武道文化に関する以下の映像2編を作成し、研究代表者である酒井が作成したバイリンガル・ウェブサイト「武道ワールド/Budo World」(https://budo-world.taiiku.tsukuba.ac.jp/)より発信した。 ・東京高師五行之形:「東京高師五行之形」は、教育剣道の父といわれる高野佐三郎範士(東京高等師範学校体育科初代剣道主任教授)が、教師として教えやすく、また、学生として学びやすいように研究、工夫、創成したものであり、教育の本山といわれた旧東京高等師範学校から東京教育大学そして筑波大学へと継承されてきたものであり、近現代武道において非常に重要な教材である。今回、これを正しく後世に伝えるため、佐藤成明範士の解説を付して映像化した。【打太刀:佐藤成明(筑波大学名誉教授)、仕太刀:香田郡秀(筑波大学教授)】 ・五の形:「五の形」(いつつ・の・かた)は、嘉納治五郎師範が明治20年(1887)講道館柔道の形として制定され、柔道の攻撃防御の理合いを高尚に表現し、5本まで作られたので「五の形」と称しているが、個々の技に名称がない。この形は、天地自然の姿であり、その理法をかたどって柔道的に表現した芸術味のあふれた形であるといわれ、同様に近現代武道において非常に重要な教材である。【取:佐藤伸一郎(拓殖大学)、受:増地克之(筑波大学)】
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