研究課題/領域番号 |
16K12982
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤田 勉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30452923)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動機づけ / ケーラー効果 / 小さな池の大きな魚効果 / 自己効力感 / 心拍センサー / 非意識 / 集団 / プライミング |
研究実績の概要 |
動機づけには行動を持続させる働きがある。それを増強させていくためには、成功体験の積み重ねが必要になるため、指導者や仲間の役割が重要となる。しかし、教師や仲間がどんなに有効な言動を使っても、受け手が望ましいと解釈するわけではない。そこで、教示や方略がなくても、動機づけを増強させる仮説を応用するに至った。1つは、小さな池の大きな魚効果であり、もう1 つは、ケーラー効果である。本研究では、これら 2 つの仮説を実験法によって検証する。 28 年度は、心拍水準が動機づけの行動指標となる実験環境を構築した。大学生を被験者として、実験法により運動中の集団内で心拍水準を動機づけの行動指標として測定した。実験課題は、体育館で行う漸進的ペース走であった。シャトルランと同様、20 名程度の集団で走行を開始し、快適さを維持できなくなったことを自己の基準で判断した時点で集団から離脱するというものであった。予め、全力の20m シャトルランテストにより最大心拍数を測定しておき、漸進的ペース走の離脱時心拍数は心拍水準として換算され、これを動機づけの行動指標と仮定した。すなわち、漸進的ペース走における心拍水準が高いほど、動機づけが高いという仮説を立てた。 走行中の被験者全員の心拍数は、無線式の集団心拍測定装置に記録した。動機づけの行動指標の妥当性の検討として、実験前後の心理状態との相関関係で検討した。先行研究では運動中の心拍水準は、運動後の短縮版POMS における活気尺度と弱い正の相関、運動後の主観的運動強度と中程度の正の相関になることが明らかになっている。本研究においても、同様の分析を施したところ、漸進的ペース走離脱時の心拍水準と活気尺度得点及び主観的運動強度得点に弱い正の相関が示された。これらのことは、本研究において、心拍水準を動機づけの行動指標とする実験環境が構築されたことを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は、20名前後の集団内で運動をしている各個人の心拍数を動機づけの行動指標として測定し、心理指標との相関関係を明らかにすることが計画とされていた。この計画をほぼ実現できたこと、また、実験についても、ほぼ望んでいた結果が得られたことから、特に問題を抱えることなく、実施できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
29 年度は、約200 名の大学生を被験者として、体力レベル別に集団を編成し、漸進的ペース走の実験を縦断的に行う。体力レベルの分類は、20m シャトルランテストの記録を基準として、上位群を高体力群、下位群を低体力群とする。したがって、実験期間中は、低体力群、高体力群、統制群の3 群で実験を進めていく。走行開始後、集団から離脱するまでの過程は、28 年度と同様である。4 月から9 月に実験環境を構築するための予備実験を行う。10 月に20m シャトルランテストで最大心拍数(HRmax)を測定し、体力レベル別の集団を編成する。11 月上旬にプレテストで心拍水準(%HRmax)を測定する。11 月上旬から1 月下旬にかけて、各群の条件下で心拍水準(%HRmax)を6 回測定する。2月上旬にポストテストで心拍水準(%HRmax)を測定する。3 月にデータを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品、旅費、人件費等を必要に応じて使用した結果の残高である。6千円程度であったため、無駄に使用するのではなく、次年度に大量に購入する必要があると思われる心拍センサー用の電池代に充てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は、28年度よりも数多くの実験を実施する必要があるため、心拍センサー用の電池を購入する。
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