豊かな自然の恵みを受けながら幼児の発達を支援する保育形態として「森のようちえん」は全国各地で実践されるようになってきた。本研究では「森のようちえん」保育者の資質について、PA(Project Adventure)の視点から言及することを目的とした。 本研究では、山梨県の自然体験活動施設1施設において5回開催された「森のようちえん」を研究の対象とした。保育者に必要と考えられる具体的な資質を抽出するため、10年以上の指導経験を有する保育者が、一日の活動をふり返って保護者に向けて語った語りを文章化した。されに、これらの内容について、ナラティブな分析を行った。 「森のようちえん」の保育者は、子ども同士で「活動のペースが互いに異なることを認め合える」、「フルバリューな関係が築ける」、「子どもによって、チャレンジしたいことや、チャレンジしたいと思えるタイミングは異なる」、子どもには「安心してチャレンジに向き合えるような準備が必要である」という点を意識して、幼児の活動を支援することが重要である。さらに、子どもの力や可能性を軽んじることなく、「子どもから気づきを引き出す」こと、「子どもの行動をコントロールしない」ことが保育者に求められると考えられる。 幼児は、ただ面白いから遊ぶ、という活動を通して、互いに知恵を出し合い、仲間とともに生きるスキルを身につけていく。そこで、「森のようちえん」の保育者は、自分が気づいたことを的確に言語化できない幼児を注意深く観察し、本研究で明確化された資質を高めながら実践に取り組むことによって、わが国の「森のようちえん」の質の向上が期待できると考えられる。
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