研究課題/領域番号 |
16K12988
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
進矢 正宏 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90733452)
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研究分担者 |
瀧山 健 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (40725933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動学習 / 脳卒中 / パーキンソン病 / 高齢者 / リハビリテーション / スマートデバイスアプリ |
研究実績の概要 |
本研究は、スポーツやリハビリテーションの現場で簡便にアスリートの個性を定量化可能なタブレット端末用アプリケーションの開発とその妥当性の実証し、定量化された個性に適したテーラーメイドトレーニングを開発することを目的とした。
平成29年度は、前年度に開発した運動学習計測アプリケーション(PoMLab)を用いて、鹿教湯温泉リハビリテーション病院および自治医科大学と共同で、高齢者・脳卒中患者・パーキンソン病患者を対象とした計測を行った。これらの被験者群に対しては、従来の神経科学分野における運動学習実験では、大掛かりな装置を用意した実験室に患者を呼んだ上で長時間の計測を行う必要があったが、本研究課題で開発したアプリを用いることで、ベッドサイドで10~15分程度で簡便に計測することが可能となった。
被験者はタブレット端末を傾けることで、画面上のカーソルを操作しターゲットに当たるよう求められた。端末を傾ける向きと、カーソルが移動する方向を、徐々に変化させることによって、被験者に気づかれることなく無意識的な運動学習の計測を行った。得られた結果を、状態空間モデルを用いて解析することにより運動学習パラメータを推定した。運動学習パラメータを各種疾患の臨床的スケールを合わせて分析することにより、無意識的な運動学習能力そのものは、加齢や認知能力の低下には影響されないこと、脳卒中患者において入院初期の運動学習速度と退院までの回復量との間に相関がみられること、パーキンソン病患者の運動学習能力はむしろ他の被験者群より優れている可能性があること、が示唆された。これらの結果は、モーターコントロール研究会、体力医学会、および北米神経科学会(SfN)といった国内外の学会で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開発した運動学習測定アプリを用いて、鹿教湯温泉リハビリテーション病院および自治医科大学病院で、高齢者・脳卒中患者・パーキンソン病患者を対象とした計測を本格的に開始し、順調にデータが蓄積されている。途中経過として、無意識的な運動学習能力そのものは、加齢や認知能力の低下には影響されないこと、脳卒中患者において入院初期の運動学習速度と退院までの回復量との間に相関がみられること、パーキンソン病患者の運動学習能力はむしろ他の被験者群より優れている可能性があること等の興味深い結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に引き続き、鹿教湯温泉リハビリテーション病院および自治医科大学病院で、高齢者・脳卒中患者・パーキンソン病患者を対象とした計測を続ける。予定している被験者数のデータが得られ次第、運動学習パラメータと各種疾患の臨床的スケールとの相関を分析し、病態や重症度と運動学習能力との関係を分析するほか、予後予測に活かせないか検討を重ねる予定である。平成30年度は、それらの結果を国際誌に投稿・発表する予定である。
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