平成29年度は,2つの研究を実施した. 昨年度は【研究1:静止したボールに対するキック動作の測定1】として正面のターゲットに対する3種類のキック間の正確性の差について検討した.今年度はまずこれに追加する形の【研究2:静止したボールに対するキック動作の測定2(利き脚-非利き脚間,ターゲット方向の違いの比較)】を実施した.7名の大学男子サッカー選手を対象に,11m先のゴールの中心と左右端(計3箇所)に設置したターゲットを狙った利き脚でのシュート動作を各条件8本ずつ行い,モーションキャプチャシステム,ハイスピードカメラ,フォースプレートを使用して記録した.また,中心ターゲットへは非利き脚によるキックも行った. 次に,当初計画では「転がるボールに対するキック動作の測定」を実施する予定であったが,計画していたボール供給方法では安定したボール供給と屋内での安全な実験実施を両立することが困難となってしまった.そのため計画を変更してこれまであまり行われていない【研究3:ロングキック動作の測定】を実施した.8名の大学男子サッカー選手を対象に,屋外人工芝グラウンドにて20m先の障害物を越え40m先の的を狙った試合を想定したロングキックを利き脚で1人12本ずつ実施した.キック動作は4台のハイスピードカメラ(300fps)で撮影し,ボールの落下点は1試行ずつメジャーで計測した. これら2つの研究で得られた結果から,サッカー選手のキックパフォーマンスを分析しより正しく評価するためには,従来のような最も成功した1試技だけの分析では不十分で,失敗を含めた複数本の分析実施が望ましいとする結論が得られた.
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