研究課題/領域番号 |
16K12990
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 秀幸 東京農工大学, 工学研究院, 教授 (70231412)
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研究分担者 |
篠原 和子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00313304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動きの音象徴 / オノマトペ / 動きの視知覚 / 身体運動知覚 / 受動運動 |
研究実績の概要 |
身体運動感覚の微妙な違いを表現する言葉として,スポーツオノマトペ(擬態語・擬音語の総称)が注目されている.本研究課題では,スマートフォン搭載機能を活用して,動きのリズムや運動の滑らかさ等の運動感覚的な手がかり情報を,学習者にオノマトペ表現音声で伝えるスポーツスキル学習支援システムの開発を最終目標としている.この目標達成のために,研究期間内は,当該システムの開発に必要な論理アルゴリズム構築を目的とした基礎的な認知実験研究を行なう. 平成29年度は,物体の動きや身体の動きが言語音のどのような特徴と結びついているかー運動と言語音の関係性ーを明らかにすることを目標とした. 実験1では,被験者は2種類の光点動画を観察した.光点の運動軌道は2種類とも等しく,Kohlerのmaluma図形に類似した形であった.一方の光点は等速運動パターン,他方の光点は加速・減速を繰り返す動きのパターンであった. 実験2では,被験者は,モータ起動のマニピュランダムによって,2種類の手の受動的な動き(2次元水平面内の運動)を体験した.2種類の手の動きの軌道および運動学的特性は,光点動画のそれと一致していた. 両実験において,被験者は,視覚あるいは運動感覚的に知覚した運動の特徴に対して,偽単語創作課題を行なった.創作された単語に含まれる子音を分析した結果,加速度運動の刺激には阻害音が,等速運動の刺激には共鳴音が多く含まれていた.これらの結果から,身体運動を表象するために選択される言語音は,運動の軌道の形ではなく,加速度のような運動学的特性と有意に関連する仮説が示された. 平成28年度に,我々のグループとオーストリアのグループが世界で初めて,ほぼ同時期に「運動の音象徴現象」を報告した.平成29年度は,運動の音象徴現象に関して,さらに一歩進んだ知見を得る事ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度内に複数の実験を実施し,新たな知見を得る事ができた.その成果は,3編の国内学会発表,1編の国際学会発表として公表された.なお,国際雑誌へ1編の論文投稿を行なった(査読中).
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度と29年度の研究成果から,特定の身体運動が特定の言語音に結びついていることが示された.これまでは,動きの知覚を言語音に変換する機構について調べてきたが,平成30年度は,言語音の聴覚刺激による運動イメージ想起効果について,実験を行なう予定である.
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