研究課題/領域番号 |
16K12993
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
島 圭介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50649754)
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研究分担者 |
島谷 康司 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00433384)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機能的電気刺激 / 振動刺激 / 運動学習 / ニューラルネット / パターン認識 |
研究実績の概要 |
本研究では,多チャネル加速度センサから身体運動情報と筋収縮情報(筋音図) を同時計測してユーザの関節運動を推定し,電気刺激と振動刺激を用いて筋収縮状態を再現・増幅する新たな方法論を提案する.そして提案する計測・増幅技術をベースに,ヒト-ヒト間で複雑な関節運動を伝達可能な新しいインタフェースシステムを開発し,運動に伴う筋収縮技術・力情報を伝達・訓練可能とする.具体的には(1) 運動・筋音図の同時計測法に基づく筋収縮量と感覚刺激量の関係をモデル化し,(2) 巧みな関節運動を表現・予測する関節運動モデルと動作推定ニューラルネットを提案するとともに,(3) 感覚刺激による筋収縮情報伝達システムを開発し,運動技術を再現・伝達する訓練装置の開発を目指す.
本年度は,[1] 加速度信号から運動と筋音図の同時計測法確立,[2]運動中における感覚刺激の知覚特性のモデル化を目的として研究を実施した.筋付近に加速度センサを配置して関節運動を実施した場合,計測される加速度信号には周波数領域によって筋音図(30~150Hz)[三田,2002],身体運動に伴う関節運動情報(~25Hz)が含まれる.このことから多チャネル加速度センサを用いて関節運動と筋収縮パターンを同時計測する方法論を構築した.6 軸加速度センサ(加速度+ジャイロ) を皮膚表面に多チャネル配置して関節運動を実施させ,2 種類のバンドパスフィルタを用いて筋音図と身体運動情報を分離抽出可能とした. また,被験者に電気刺激用の電極を複数取り付け,刺激に対する筋収縮量を筋音図で計測するとともに,被験者の筋収縮知覚特性をマグニチュード推定法によってモデル化した.電気刺激の振幅(刺激量I)として伝達するとしたとき,知覚する筋収縮の大きさ(知覚量E) は刺激閾I0 を最小値とするモデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案法の確立には,電気刺激および振動刺激を用いた運動コミュニケーション技術の確率が必要不可欠である.本年度は,既に各種刺激を用いた運動伝達の基礎理論は確立できており,筋音図と加速度センサを用いた動作推定と運動感覚特性の評価に注力した.学術雑誌論文の掲載にこそ至らなかったものの,既に感覚特性のモデル化には成功しており,さらに多チャネル筋音図を用いた動作推定・評価法を確立し,被験者に対する評価を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,■ 電気刺激による運動技術教示方法の開発(電極位置と刺激量の評価)と■ユーザの意図する/意図しない動作を推定する方法論の構築を目指す.多チャネルの加速度センサを関節運動に関連する各筋表面に貼り付け,被験者の動作意図を運動情報と筋音図から推定して適切な筋収縮パターンの時系列的な変化と収縮量・収縮のタイミングを振動あるいは電気刺激,またはその重畳刺激を与えて筋収縮を促すトレーニング法を考案する.本研究では多数の電極を配置したシート電極を被験者に貼り付け,計測した関節運動と電気刺激パターンの関係性を研究代表者が考案してきたニューラルネットに学習させる.解剖学的知見とHill の筋モデルをベースとした筋骨格モデルから,関節運動を生成するための適切な電気刺激位置と刺激量を被験者個々に自動的に獲得する.また,本研究では通常のパターン識別モデルに用いられる混合正規分布モデルを拡張し,余事象を導入した新たな分布モデルと隠れマルコフモデルを内包したニューラルネットを考案し,ガウス分布線形化モデルを導入してニューラルネットの重み係数ベクトルとして獲得する方法論の開発を試みる.これを用い,予期せぬ刺激による学習阻害を防いだトレーニングシステムの開発に役立てる.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の仕様選定に時間がかかり,年度内に購入できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の9月末ごろまでに実験装置を購入する予定である.
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