本研究では,多チャネル加速度センサから身体運動情報と筋収縮情報(筋音図) を同時計測してユーザの関節運動を推定し,電気刺激と振動刺激を用いて筋収縮状態を再現・増幅する新たな方法論を提案する.そして提案する計測・増幅技術をベースに,ヒト-ヒト間で複雑な関節運動を伝達可能な新しいインタフェースシステムを開発し,運動に伴う筋収縮技術・力情報を伝達・訓練可能とする.具体的には(1) 運動・筋音図の同時計測法に基づく筋収縮量と感覚刺激量の関係をモデル化し,(2) 巧みな関節運動を表現・予測する関節運動モデルと動作推定ニューラルネットを提案するとともに,(3) 感覚刺激による筋収縮情報伝達システムを開発し,運動技術を再現・伝達する訓練装置の開発を目指す. ■ 仮装電極モデルに基づく電気刺激効率向上と運動増幅 電気刺激による運動誘発では、関節運動に伴って筋の長さが変化することから、運動を誘発するための適切な電気刺激位置(Motor Point: MP; 運動点)が変化する問題がある.MPが変化すると、電気刺激によって効率的な運動誘発ができないのみならず、不快感や痛みが生じてしまう可能性がある。そこで、複数電極による多チャネル電気刺激を組み合わせて仮想的な電気刺激電極を生成する仮想電極理論をもとに、関節運動状態を筋収縮ー筋長モデルを構築することで効率的な電気刺激法を考案した。提案法に基づく運動誘発実験により、単純なMP位置の電気刺激法に比べ、提案する仮想電極を用いた追従刺激法によってより効率的な筋収縮誘発が可能であることを示し、誘発する関節角度や角速度が大きく向上できることが明らかになった。
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