研究課題/領域番号 |
16K12994
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 裕二 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (30191456)
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研究分担者 |
木島 章文 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10389083)
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (30722102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 集団ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本年度は,主に二つの方法からシュートシーンの予測につながる集合変数を探索した. 一つは,これまでの我々の研究(Kijima et al., EPJ-B, 2014)から,チームの前線とボール位置の時間変動にはフラクタル性があり,非整数ブラウン運動がみられたことより,両チームのディフェンスラインとボールを3つの振動子と見立て,3連結振動子の連成振動としてモデル化を試みた.その結果,サッカーのディフェンス(DF)ライン同士は同相同期し,両チームのDFラインとボールとの距離は逆相同期する現象が,このDFラインとボールの動きを,3つの質量からなる連成振動と仮定することによって,DFラインはゴールラインとボール位置を基準に動き,両チームのDFライン間の距離はほぼ一定となることが明らかになった.しかしながら,ボールは両チームのDFラインの中で振動するが,その振る舞いは複雑に見えるものの,フラクタル性は見られず,粘性抵抗を考慮する必要があることが示唆された. もう一つのアプローチは,時間スケールの異なる,ゲームのオンとオフの時間の切り替わり,各チームのボール保持時間の切り替わり,各選手のボール保持時間の切り替わりに着目して,その時間変動に潜む共通の規則性を探った.Jリーグの10試合を対象に分析した結果,多くの試合において,ゲーム,チーム,選手の3つの異なる時間スケールでベキ則が成り立つことが認められた.このことは,ゲームの流れ,チームの勢い,選手の動きといった異なる時間スケールにおいても,同様のリズムの存在を示唆するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り,Jリーグの10試合を対象に分析を進めている.シュートシーンは安定や秩序ある状態から逸脱し,不安定化,あるいは一見無秩序に見える状態になることと考えており,現在は,その安定,秩序の解明を優先的に行っている.その中で,新たに着目した連成振動とリズムのフラクタル性は,ゲームの定常状態を表しており,実際のゲームにおいてこの定常状態が崩れる場面を検出することが,シュートシーンの予測アルゴリズムにつながると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,連成振動モデル,リズムのフラクタル性以外にも,パス行動をネットワーク構造から検討することを考えており,これらからその秩序ある状態の破綻に注目していく.ただし,実際の試合ではシュートシーンに至る場面が少ない試合もあり,その場合には,攻撃においてきわめて重要とされる,いわゆるバイタルエリアと呼ばれる領域でのプレーに着目する場合もありうる.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との打ち合わせが計画よりも1回少なく,学会発表が招待講演となったため,参加費等が免除されたため
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会(スペインで開催される国際スポーツ心理学会)への旅費に使用する予定である
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