本研究は、スポーツ等で相手に勝つ過程に見られる機能的な認知・運動が「対人競技の巧みさ」であると捉え、これを評価することを目的とした。 前年度までの研究では、柔軟な移動運動が可能な切替自律分散型モデルを提案したが、 少自由度での実装にとどまっており、これを実際のスポーツなどの全身多自由度系に応用する際に、想定する次元が膨大になってしまうという問題点が生じた。 そのため今年度は、まずは実際の多自由度系の運動データから、各要素のダイナミクスに基づく次元削減手法を開発することを考えた。 データから時空間パターンを抽出することによって動的システムを理解することは、工学や科学のさまざまな分野で重要である。明示的な事前知識を必要とせずに、データから非線形動的システムの大域的なモード記述を得る方法として、動的モード分解と呼ばれる手法に着目した。 1つ目の研究では、動的モード分解にラベル情報を組み込む定式化を、複数タスク学習の枠組みで行う(Sparse-group Lassoと呼ばれる正則化を行った最適化問題を解く)ことで、ラベル情報を反映した動的モードを抽出する手法を開発した。本手法は合成データと身体運動データを用いて検証され、投稿原稿は国際学術雑誌において発表された。 2つ目の研究では、冗長かつ支配方程式が不明なヒトの多関節運動に関して、非線形動的システムの観点から理解するために、作用素のスペクトル解析的な観点からデータ駆動的に合成作用素の固有値や固有関数を推定する方法を用いて検証する研究を行った。この研究も現在、国際学術雑誌において査読中である。
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