研究課題/領域番号 |
16K12998
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
福山 博文 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (40409537)
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研究分担者 |
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 利他性 / スポーツファン / 損失回避性 |
研究実績の概要 |
本年度はまず前年度に引き続き,研究目的の一つである利他性をもつ経済主体を想定した場合の地域のプロスポーツチームの投資行動および自治体による公的支援のあり方について文化伝達モデルを用いて考察を行った。 利他性をもつ地元チームのファンはスポーツ観戦によって得る効用だけでなく自身の子どもの効用も考慮して,子どもの教育方法とその水準を決める。プロスポーツチームは観戦者数を増大させるためにスター選手を獲得したりスタジアムの改修等を行う。自治体は地域住民の効用が最大になるようにプロスポーツチームへの公的な支援を行う。 本研究の主要な結論は以下の通りである。自治体のプロスポーツチームへの公的支援はプロスポーツチームの投資を増大させ,地元チームのファンの数を増大させる一方で,地元チームのファンの数が増えるとファン形成プロセスにおける垂直的影響(親による影響)と水平的影響(ファンの割合による影響)の代替関係から地元チームのファンになるための親の教育投資水準が低下することが明らかになった。 さらに本年度の後半は本研究の主要なテーマである行動経済学の代表的な理論であるプロスペクト理論の損失回避性をもつプロスポーツ観戦者の行動について検証を行った。伝統的なスポーツエコノミクスではスポーツ観戦者の行動はUOH(Uncertainty of Outcome)に基づくとされている。これは,贔屓チームのワンサイドゲームよりも接戦であることを好むというものである。スポーツ観戦者はUOHに基づくのか,それとも損失回避性に基づくのかをNPBの膨大な試合レベルのデータを用いて現在検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度から継続して行っている利他性の研究を整理し成果としてまとめながら,本研究の主要な研究テーマであるプロスペクト理論を用いた観戦者行動の研究を開始したところである。研究目的を達成するために共同研究者とは研究会や学会の合間にたびたび研究打ち合わせを行い,情報交換を行うことで効率的に研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究課題の最終年である。プロスペクト理論を用いて,スポーツ観戦者がUOHに基づくのか,損失回避性に基づくのかを明らかにする。NPBの膨大なデータを利用するため学生アルバイトを雇用し,データの収集・整理をできるだけ効率的に遂行する。共同研究者と綿密に打ち合わせを行い,研究会や学会での研究発表を通して論文のブラッシュアップを行い,スポーツ経済学の英文雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度における研究計画は予定通り進められたが,結果として,98,741円の差額が生じた。これは,共同研究者と9月に研究打ち合わせのための旅費として計上していたが,台風のため中止となったためである。この分を埋め合わるために,メールや電話,学会の合間の時間を利用して効率よく研究打ち合わせを行ったため,研究計画に遅れは生じなかった。 (使用計画) 次年度に繰り越された98,741円は,次年度の研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。次年度は研究期間の最終年度であるため共同研究者とより綿密な研究打ち合わせを行い,より完成度の高い論文に仕上げていく。
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