研究課題/領域番号 |
16K13001
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
舛本 直文 首都大学東京, オープンユニバーシティ, 特任教授 (70145663)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オリンピズム / オリンピック研究 / オリンピック平和運動 / オリンピック休戦賛同の壁 / オリンピック休戦センター |
研究実績の概要 |
本研究は、オリンピック競技大会の主要目的である平和運動推進のための方法として、その可視化と印象的なアピールのために「オリンピック休戦賛同サインの壁」(以下、「休戦の壁」と略記)の設置目的とその歴史的経緯について明らかにし、今後の有効活用に向けた示唆を得ることを目的とするものである。平成28年度は以下の2つの下位目的を設定して取り組んだ。(1)これまで設置されてきた「休戦の壁」の存在を確認すること、(2)それらの「休戦の壁」の平和運動としてのこれまでの設置目的と活用の実態を明らかにすることである。このことによって、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会時の選手村内の休戦の壁の有効活用法に向けた示唆を得ることができる。 平成28年度は以下の研究に取り組んだ。 (1)アテネのオリンピック休戦センターを訪問し、2004年アテネ大会時のオリンピック休戦賛同の壁の所在を確認することができた。しかしながら、当休戦センターの倉庫に保管されているのみで、全く活用されていない実態を確認した。現地インタビュー調査でも、今後の活用の計画がないことを確認することができた。今後は当センターのウェブサイトでの活用法などについてアドバイスをしてきた。 (2)2006年トリノ冬季大会の選手村跡地およびトリノ大学のオリンピック研究センター(OMERO)を現地調査した。2006年大会時のオリンピック休戦の壁は選手村跡地には存在しないこと、および大会時にテレビ局RAI内に設置してあった「オリンピック休戦賛同ノート」が全く活用されていない実態を現地調査で確認した。 (3)両都市のオリンピック休戦センターとオリンピック研究センターとは今後の研究上の情報共有体制を確立することができた。 これら両都市の視察結果は日本オリンピック・アカデミー(JOA)のJOAコロキウムおよびウェブサイトにて情報発信し、公表してきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、予算配分の限界から毎年2カ所のオリンピック開催都市を現地調査してオリンピック休戦賛同の壁の所在とその活用状況を確認する研究計画を立てている。そのために、平成28年度はアテネのオリンピック休戦センターでの「休戦の壁」の所在確認と活用されていない実態を把握することができたこと、およびトリノの選手村跡地とOMEROというオリンピック研究センターを訪問して「休戦の壁」が選手村跡地には存在せずトリノ市内でも活用されていない実態を確認することができた。このように2都市の現地調査を実施し、両開催都市共に「休戦の壁」のサインの活用の実態が無いことを確認することができた。残された2カ年間では、残り4都市の現地調査を予定していることから、本研究の進捗状況はおおむね順調であると判断している。なお、2020年東京大会におけるオリンピック選手村での「休戦の壁」の設置と大会後の活用に向けての示唆は、アテネのオリンピック休戦センターと2020年東京大会組織委員会の平和運動との調整が必要となるが、この点については平成29年度に中心的に対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度および平成30年度では、2008年北京大会、2010年バンクーバー冬季大会、2012年ロンドン大会、2018年平昌冬季大会のオリンピック選手村での「オリンピック休戦賛同の壁」の所在と大会後の活用状況を情報集すると共に可能な限り現地調査する予定である。特に、2010年バンクーバー冬季大会、2012年ロンドン大会の2大会を対象にして、各組織委員会の関係者、オリンピック博物館、オリンピック研究所を中心に各種の情報収集・分析・纏めを行う予定である。また、平成29年度は2018年平昌冬季大会において現地調査を行い、韓国における平和運動の状況を把握し、平和的レガシーの確認作業を進める予定である。 平成30年度には、可能な限りブエノスアイレスYOGの平和運動計画の確認、ローザンヌのオリンピック研究所OSCにおける「オリンピック休戦賛同の壁」に関する情報収集を行い、全体の纏めを国際学会にて報告する予定である。 本研究計画で、2014年ソチ冬季大会を除外するのは、ロシアへの旅行の際にビザ取得等の時間的・手続き的問題が予想されるからであり、2016年リオ大会を調査から除外するのは、配分された研究費の総額では旅費の予算執行が困難であることが主な理由である。ただし、これら2大会の現地調査を除外しても、最近の「オリンピック休戦賛同の壁」の活用状況は大会公式報告書などの資料である程度確認できると判断している。 2020年東京大会におけるオリンピック選手村での「休戦の壁」の設置と大会後のレガシーとしての活用の方向に向けては、アテネのオリンピック休戦センターと2020年東京大会組織委員会との調整が必要となるが、その実現に向けて提案していく予定である。
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