研究課題
競泳やシンクロなど水泳に関する競技では,画像処理技術や無線通信が十分に活用できない環境であるため,競技中のデータ収集・分析,アスリートや指導者への即時フィードバックを可能にする新たなセンサの開発が求められる.また,特殊な水中運動環境で“手足で水をつかむキャッチ動作”については未だ明らかにされておらず,水泳指導において,指導者がうまく指導できないポイントの1つになっている.この水泳独特の“キャッチとキック動作”の解明とその可視化が水泳指導の飛躍的な向上につながる可能性が高い.本研究は,伸縮性ひずみセンサによる水中動作分析と,超音波装置を用いた筋腱の硬さ評価による力発揮推定システムをそれぞれ開発し,それらの同時測定可能な測定システムへと発展させ,“水のキャッチやキック動作”の調整機序の解明、そして,水泳特有の“コツ”をつかむ感覚のトレーニングとして活用できる,リアルタイムに動作や力発揮を視覚化しフィードバックできるトレーニングシステムの開発にチャレンジしている.本年度は,伸縮性ひずみセンサを防水加工することに成功し,ドルフィンキック中の関節角度データをリアルタイムで取得できるシステムを開発した.また,超音波プローブの防水加工し,ドルフィンキック中の筋腱の硬さ評価できるシステムを確立したが,泳中の筋腱の硬さ評価方法については,いくつか問題点を指摘され現在検討中である.伸縮性ひずみセンサによる動作分析方法に関する論文は,投稿の準備中で本年度中に投稿する予定である.
3: やや遅れている
本年度は,伸縮性ひずみセンサを防水加工することは計画通り進んだ.繰り返し行うドルフィンキックによって、ひずみフィルムと皮膚との粘着素材が剥がれやすくなり,長時間の測定を継続するのが困難な状況にある.そのため,皮膚と同じ程度の伸び率の粘着フィルムを開発し,繰り返し測定データの信頼性を高める検討を行っており、若干計画が遅れている.ドルフィンキック中の関節角度データをリアルタイムで取得できるシステムを開発は終わり,現在投稿論文としてまとめている(学会での発表済み).この論文投稿は1年目に計画していたが,上記の検証の為,2年目にずれ込んでいる.また,超音波プローブの防水加工,ドルフィンキック中の筋腱の硬さ評価の測定できるシステムは開発できたが,泳中の筋腱の硬さ評価方法のデータの再現性が低く,陸上での運動中のデータとの違いについて,現在検討中である(学会での発表済み).
2年目では,1年目に再現性が得られなかった泳中の超音波装置による筋腱の硬さ評価のシステムの改良を行い,システムの確立後,超音波装置による筋腱の硬さ評価から力発揮の推定するシステムを開発を進めていく.具体的には,ダイナモメーターを用いて,上腕・膝・足首・手首などの伸展・屈曲トルク測定時に,超音波による筋腱の硬さ評価を実施する.得られた各トルクデータと超音波装置による筋の横断面積測定から各筋の分力を推定し,筋腱の硬さと力発揮関係から回帰式を得,泳中の筋腱の硬さ評価測定から発揮筋力とトルクの推定を行う.確立した伸縮性ひずみセンサによる動作測定システムにおける粘着素材の改良を行い,測定回数を増やすことができるように工夫していく.また測定データをPCやタブレット端末を用いて視覚化しリアルタイムフィードバックできるシステム開発を進めていく.水中では無線によるデータ転送が困難なため,測定データの有線による取り込みシステムの開発とウェアラブル端末の開発の可能性にまで着手していきたい.
測定方法における問題点の確認により,競泳経験者を対象とした測定とそのデータ分析の実施が次年度へ持ち越され,それにかかる費用分が次年度での使用額として生じた.
測定方法が確立し次第,競泳経験者を対象とした測定を今年度中に実施していく.その被験者協力にかかる謝金とそのデータ分析にかかる謝金として,次年度に持ち越して使用する.
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