研究課題
速筋で発現するACTN3遺伝子にはR型とX型の2つのアレルの組み合わせによりRR型、RX型、およびXX型の遺伝子型が存在する。異所性の翻訳終止コドン(PTC)をもつX型のmRNAは細胞内でナンセンスコドン依存性mRNA分解(NMD)により分解されるため、XX型のヒトでは速筋内にコードタンパク質であるalpha-actinin-3が発現しない。これまで、XX型のヒトよりもR型保有者の方がパワー・瞬発系運動に適しているとする報告が多い。本研究では、PTCを読み飛ばすリードスルー物質によって、X型のACTN3 遺伝子からR型と同じalpha-actinin-3を発現できるか否かを検討した。平成28年度の研究で、ヒトACTN3遺伝子のX型mRNAを外来性に培養細胞に発現させることで、X型ACTN3遺伝子発現細胞を作製した。この細胞を用いて、X型ACTN3遺伝子のPTCに対するリードスルー薬(アミノグリコシド系抗生物質)の影響を検討したところ、X型ACTN3遺伝子から全長の外来性alpha-actinin-3タンパク質が発現することを確認した。一方、外来性にX型ACTN3 pre-mRNAを発現する細胞を作成した。この細胞においては、X型ACTN3mRNAがNMDによって分解されていることを明らかにした。平成29年度の研究で、外来性にX型ACTN3 pre-mRNAを発現する細胞では、リードスルー薬の投与によって全長alpha-actinin-3タンパク質の発現は検出できなかった。しかし、NMD阻害とリードスルー薬の共存によって、全長alpha-actinin-3タンパク質が発現することを確認した。以上の結果より、ACTN3のXX型のヒトでも全長のalpha-actinin-3タンパク質を発現できる可能性が示唆された。
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