研究課題/領域番号 |
16K13018
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西島 壮 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (10431678)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動 / 海馬 / 神経新生 / 抗酸化物質 / 活性酸素種 |
研究実績の概要 |
運動が海馬における神経細胞の新生を促進させることは数多くの研究で報告されているが、その調節メカニズムは依然として不明な点が多い。そこで本研究は新たな調節分子として活性酸素種(ROS)に着目し、運動が海馬の神経新生を促進するメカニズムとしてROSシグナルが関与するか検証することを目的とした。この目的を達成するため、以下2つの課題を設定した。 課題1:抗酸化物質摂取は、運動による神経新生促進効果を阻害するか? 課題2:ROSの海馬内局所投与は、神経新生を促進するか? 本年度は、課題1に取り組んだ。実験ではC57Bl/6マウスを、1)非運動+Vehicle投与群、2)運動+Vehicle投与群、3)運動+低濃度ビタミンC・E投与群、4)運動+高濃度ビタミンC・E投与群の4群に分け、運動群には回転ホイールを用いた自発走運動(4週間)を行わせた。神経新生(細胞増殖、新生細胞の分化・生存、および幼若神経細胞密度)は、免疫組織化学的手法により解析・評価した。その結果、運動は海馬における細胞増殖(Ki-67陽性細胞)を増加させたが、その効果はビタミンC・Eの濃度依存的に抑制されることを見出した。このビタミンC・Eによる抑制効果は、神経新生の他の過程にはみられなかった。 以上の結果から、運動が神経新生を促進するメカニズムとしてROSシグナルが関与し、さらにROSの作用は細胞増殖に特異的に作用している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画通り、課題1を遂行することができた。しかしながら、他の抗酸化物質でも同様の結果を得ることができるか再検証できておらず、今後の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(2017年度)は、当初の予定通り課題2に取り組む。マウスに麻酔を施し、左右の海馬に微小カニューレを外科的に挿入する。数日間の回復後、片側に希釈した過酸化水素水(H2O2)を、対側に生理食塩水を局所投与する。翌日に脳を摘出し、免疫組織化学的手法により海馬における神経新生(主に細胞増殖)を解析する。 課題2と並行し、課題1で得られた結果の再現性を確認する。実験では、抗酸化物質としてエダラボン(ROS消去剤)を用い、エダラボン投与が運動による細胞増殖促進を抑制するか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定されていた課題1の追加実験(エダラボンを用いた結果の再検証)を実施できなかったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、当初の研究計画(課題2)の遂行と並行して課題1の追加実験を行う予定であり、未使用額はこの実験に充てる予定である。
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