研究課題
本研究は、運動が海馬における神経新生を促進する新たな分子メカニズムとして、活性酸素種(ROS)シグナルが関与するか明らかにすることを目的とした。昨年度は、抗酸化物質であるビタミンC・Eを用いて実験を行い、運動による細胞増殖の促進(Ki-67陽性細胞数の増加)が、ビタミンC・E濃度依存的に抑制されることから、運動が神経新生を促進するメカニズムにROSシグナルが関与し、さらにROSの作用は細胞増殖に特異的に作用している可能性が示唆された。そこで本年度は、課題1として、ビタミンC・E投与により海馬内におけるROSシグナルが抑制されたのか検討した。さらに課題2として、他の抗酸化物質を用いても同様の抑制効果がみられるか再現性の検証に取り組んだ。【課題1:ビタミンC・E投与が海馬内ROSシグナルに及ぼす影響】本研究ではまず、自発走運動が海馬ROS産生を亢進するか検討を試みたが、ROS検出方法を確立することができなかった。そこで、ROSシグナルの中心的な役割を担うPGF-1a mRNA発現、およびその下流で発現が制御されるグルタチオンペルオキシダーゼ1(GPx1)およびシトクロームCタンパク発現から、間接的な検証を試みた。しかし予想に反して、PGF-1a mRNA発現、およびGPx1やシトクロームCのタンパク発現のいずれも、運動による発現増加を確認できず、またビタミンC・Eによる発現抑制も確認できなかった。【課題2:他の抗酸化物質を用いた再現性の検証】本実験では、医療用の活性酸素消去剤(エダラボン)を用いて検証した。投与濃度及び方法の条件検討を繰り返し行ったものの、これまでの研究結果を支持する成果を得ることができなかった。以上の結果から、運動が海馬神経新生を促進するメカニズムとしてROSシグナルが関与する可能性が示唆されたものの、その再現性およびメカニズムの解明は今後の課題となった。
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American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
巻: 312 ページ: R347~R357
10.1152/ajpregu.00397.2016
介護福祉・健康づくり
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https://nishijimalab.net/