研究課題/領域番号 |
16K13021
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
田巻 弘之 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (40253926)
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研究分担者 |
與谷 謙吾 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 講師 (10581142)
桐本 光 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 教授 (40406260)
大西 秀明 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90339953)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨組織 / ひずみ / 刺激 |
研究実績の概要 |
骨組織は力学的刺激により骨形成が亢進し、骨吸収が抑制され、日常的には身体運動の実施により骨への力学的荷重、ひずみ刺激がなされる。本研究課題では、骨ひずみ処方の有効な条件を検討するため骨への力学的刺激による骨組織への影響について調べた。その結果、以下の成績が得られた。骨ひずみ刺激のサイクルは、1日80サイクルで効果が得られた。特に脛骨骨幹端部の3次元マイクロCT撮影から骨梁の微細構造解析を行った結果、骨量(BV/TV)、骨梁幅(Tb.Th)、骨梁数(Tb.N)において非処置群と比較して高い値を示し、骨の量的パラメータにおいて効果が現れた。しかしながら、骨梁間距離(Tb.Sp)、骨梁連結密度(Conn.Dn)については差がなく、構造的パラメータ、骨梁ネットワーク構造には変化が現れなかった。また、実施インターバルについては、1週間隔で1ヶ月間の実施で骨梁の量的パラメータにおいて非処置群と比較して高い値を示し効果が得られることが示された。しかしながら、2週間隔、4週間隔では非処置群と差異はなく効果が認められないことが明らかとなった。また、骨幹部の骨強度に関して骨破断強度について検討したところ、これらの実施条件ではMaximal load、stiffness、elastic modulus等の機械的特性については非処置群と比較して高いレベルには至らなかった。これらの結果から、骨ひずみ刺激による骨組織、骨量、骨梁微細構造に対する有効性に関しては、1日80サイクルで、1週間隔以下の短いインターバルで効果が期待できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、骨へのひずみによるメカニカルストレスが骨組織海綿骨領域の骨量や骨梁構造に対する影響について結果を得ることができた。また骨幹部皮質骨領域の機械的特性に対する影響を検討することができた。骨組織へのメカニカルストレスは骨形成促進のひとつの因子であり、骨質や領域の違いによりその反応性が異なる可能性が得られた。 また効果の検証においても、骨量などの量的、構造的側面や強度などの機能的側面において有効性が現れる条件が異なることが示唆される。骨梁微細構造の量的構造的項目について効果が得られるのに必要な条件を検討することができた。これらの成果は翌年度の研究を実施する上で効率的に行うことが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた有効な実施条件をもとに進め、骨組織細胞の観察や分析を行い、骨形成促進等への影響について調べる予定である。メカニカルストレスを感受する候補である骨細胞は骨形成や石灰化に関連するタンパク質を産生するため、骨細胞数や関連タンパク質(DMP1等)について免疫組織染色を行い観察する。また下肢骨を対象として、骨量(BV/TV)や皮質骨幅、骨梁幅、骨梁連結密度、骨梁間距離等の骨組織微細構造の形態計測、さらに破断強度試験による機械的特性に対する効果を検討する。 また今後生活レベルでの応用等を考慮した場合、生理的条件下に類似した実験条件を実施することが必要となる。運動実施のための筋活動の様式や収縮レベルなどの条件と骨ひずみについて調べてより効果的な実験条件等を検討し、効率的に処方等の条件設定を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究先との共同実験を実施するにあたり、サンプル等の送付により分析等を行い、共同研究先への訪問が抑えられた。そのことにより旅費において使用額が減少しため。また、支出費目の謝金等において使用額が減少したため。 次年度においては、共同実験を実施するにあたり共同研究先への訪問を計画しており、旅費に使用する予定である。また成果公表のための学会発表や次年度に実施計画している免疫組織染色に要する消耗品(抗体等)に充てる予定である。
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