研究課題
現代社会においてメタボリックシンドロームは大きな医学上・健康上の問題であり、その発症基盤として内臓脂肪蓄積によるアディポカインの分泌異常、特にアディポネクチン分泌低下による血中アディポネクチン濃度の低下が挙げられている。しかし、最近の疫学研究により、高齢者の血中アディポネクチン濃度と骨格筋機能には負の相関関係があると報告されている(アディポネクチン・パラドックス)。速筋線維特異的な萎縮が加齢性の骨格筋の萎縮と機能低下の病態の特徴であることから、高濃度の血中アディポネクチンは速筋細胞特異的に萎縮を引き起こすことが示唆される。しかし、これまでこうした視点から検討した報告はない。本研究では、アディポネクチンが速筋細胞を特異的に萎縮させるかを培養細胞ならびに実験動物を用いて明らかにし、骨格筋機能におけるアディポネクチンの生理的学的意義を究明すること目的として2年計画で研究を実施した。平成29年度はその2年目として、実験動物を用いて、骨格筋組織に発現するアディポネクチン発現量の加齢性変化を追究した。その結果、アディポネクチン発現量は遅筋に比べて速筋で低い傾向が認められたが、加齢による発現量の増加は速筋で大きかった。また、アディポネクチン受容体アゴニスト(AdipoRon)を投与して血中アディポネクチン濃度の増加を模倣したところ、骨格筋の萎縮が観察された。したがって、高濃度の血中アディポネクチンは骨格筋量を低下させる要因であることが示唆され、その影響は速筋で強く出現するものと考えられた。
豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学分野生理学研究室http://www.sozo.ac.jp/professor/goto_katsumasa/
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