研究課題/領域番号 |
16K13027
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
木村 貞治 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (70252111)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域在住高齢者 / 転倒リスク・スクリーニング / 歩行分析 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、フィールド調査に向けての準備的作業として、転倒リスク・スクリーニングに関する先行文献のレビューや簡易歩行分析システムであるRehaGaitを用いたデータ測定の予備実験を進めてきた。転倒リスクに関する先行文献では、域在住高齢者を対象とした33の研究結果を多変量解析して算出したリスク因子の相対危険度は、転倒歴、バランス障害、筋力低下、視覚障害、歩行障害が高い値であったとされていることを確認した。また,アメリカ老年医学会が2001年に発表したリスク因子の相対危険度は、筋力低下、転倒歴、歩行障害、バランス障害が高いことを示しており、これらのリスク因子は,転倒リスク・スクリーニングを進めるうえで測定すべき評価項目であると捉えることができた。そして、歩行の時間的・空間的パラメータと転倒に関するシステマティックレビュー(Mortaza,2014)では、転倒者は非転倒者に比べて、スタンス時間の変動性が大きく、歩行速度が遅く、ストライド長とステップ長が短いことが示されているが、転倒者と非転倒者における歩行時の空間的・時間的パラメータを比較した研究では、差があると差が無いという報告が両方含まれており、統一した見解が示されてはいないのが現状であるため、今後,対象者の取り込み基準と転倒者と非転倒者の分類方法を明確にして研究結果を積み重ねることが必要と判断した。平成28年度は、このように先行研究の動向を整理しながら、転倒調査表の検討,RehaGaitを用いた健常者の歩行解析における安定した測定方法の検討と再現性の確認に関する予備実験を通した歩行機能測定方法の設定,体力測定方法の設定についての検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、フィールド調査の準備段階として、転倒歴の聴取方法、歩行機能やバランスの妥当性・信頼性について、それぞれ先行研究を抄読しながら検討してきた。転倒歴の聴取方法は、歩行の時間的・空間的パラメータと転倒に関するシステマティックレビュー(Mortaza,2014)では、転倒者と非転倒者の分類方法は、過去の研究で「1年間に1回以上転倒したかどうか」を想起して答えてもらう方法が最も多く用いられていた。さらに、転倒者は非転倒者に比べて、スタンス時間の変動性が大きく、歩行速度が遅く、ストライド長とステップ長が短いことが示されているが、差があると差が無いという報告が両方含まれており,統一した見解が示されてはいないのが現状であった。本研究で用いるRehaGaitは、歩行速度、歩幅、ケイデンス、立脚時間、遊脚時間に加えて、股関節・膝関節・足関節角度、トゥクリアランス高も計測できるため、これら複数の歩行パラメータの中で転倒リスクのスクリーニングにつながるものは何かを吟味していくこととした。バランス評価に関しては、地域在住高齢者の転倒スクリーニングとして感度、特異度が高いとされているPerformance oriented mobility assessmentとThe Mini-Balance Evaluation Systems Testの二つの内容を検討した。平成28年度は、このように先行研究の動向を整理しながら、転倒調査表の検討,RehaGaitを用いた健常者の歩行解析における安定した測定方法の検討と再現性の確認に関する予備実験を通した歩行機能測定方法の設定,体力測定方法の設定についての検討を進めることができたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、フィールドでの測定を実施する。まず、松本市、東御市等長野県内の自治体に本研究の趣旨、内容を説明し、地域在住高齢者の測定のための募集等に関する協力依頼を行っていく。続いて、研究に対する協力を得られた自治体における地域在住の高齢者を対象として、①転倒調査、②歩行機能測定、③体力測定を実施する。測定場所は、各地域の保健センター等のうち10m歩行の測定エリアを確保できる施設に機材を持ち込むことによって行うこととする。また、実際の測定は、本研究室に在籍する大学院生3名を配置することにより、測定者、測定補助者、歩行補助者を担当することとする。 平成30年度には、平成29年度に得られたデータをもとに、転倒歴の有無・頻度、基本的体力要素(柔軟性、下肢筋力、バランス等)と実際の歩行機能特性(歩行速度、歩幅、股関節・膝関節・足関節角度、トゥクリアランス高等)との関連性から転倒リスク・スクリーニングの指標を明らかにする。そして、転倒リスク・スクリーニングの指標に基づく運動指導システムの基本的な指針を構築することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算枠ぎりぎりでの備品購入となったため,わずかな差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と併せて,フィールド調査の交通費,実験補助者の人件費等として使用する予定である。
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